緋色の鎖

□第一章
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ひらひらと手を振って去っていく土方の後姿を、銀時は腹をかきながら見送ってから自分も自宅への階段を上った。

銀時と土方は、誰もが知る公認の恋仲だ。

土方の度重なるアプローチによって、最終的に銀時が折れた形で今の仲となったが、現在は銀時もまんざらでも無い様子。

むしろ今では銀時の方が依存している気配すらある。

銀時が自宅のドアを開けると、そこにいつもの活気は無く。
家族とも言える子供二人の姿が無いことに気付く。


「・・・あぁ。そういや今日は妙んとこ行くっていってたか」


今朝方そんなような話があったかと銀時は納得して、暗い室内へと足を踏み入れた。
いつもならこの時間には既に灯りがついていて、歳のわりにませた少女が椅子に寝転びながらレディース4を見ているのに。
今はそれがない。


「・・・ま、たまには静かなのも悪くねぇ・・・」


それはまるで自分に言い聞かせるかのように呟かれて。

銀時は灯りもつけずに室内に入り、社長椅子にドカッと座って窓の外を見た。
空は既に藍色に染まり、うっすらと月が昇り始めている。

昔はこれが普通だった。

この家には誰も居なくて。

自分はいつも一人でこの空を見ていた。

これが、普通だったんだ。


ふと浮かんだのは、先程まで一緒に居た男の姿。
厄介な事件を抱えていると言っていた。
そういえば最近連絡もあまり繋がらず、忙しそうにしていた。


体調を崩してはいないだろうか。

無理はしていないだろうか。


そこまで考えて、銀時は小さく笑みを浮かべる。
自分はこんなにも女々しい性格だっただろうか。
大切な存在が出来ると、人はここまで変わるものなのか。


「・・・っ!?」


ふと、一瞬脳裏に何かが過ぎった。
何かは分からない。
しかし、どこか哀しいような。
怒りのような。
そんな感情が過ぎっては消えた。
どこか身に覚えのある何か。
しかし脳はそれをまるで思い出したく無いとでも言うように。
酷い頭痛と共にそんな思いもかき消した。


「・・・あー・・・寝るか・・・・」


椅子から腰を上げて、銀時は酷い痛みを発する頭を抱えながら寝室へと入る。
寝巻きに着替えるのも億劫で、銀時は着流しを脱いだだけの格好で布団に横になり、そのまま深い深い眠りへと落ちていった。













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