白銀の月

□第十幕
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「理由なんざ関係ねぇんだよ。俺が・・・俺達がそうしたいからしてんだ。それをテメェにとやかく言われる筋合いはねぇ」

「なんだそれ・・・」

「依頼は終わりだと言い張るんなら、今ここで俺が直々に新しい依頼を言い渡してやる」

「って、なんでそんな上から目線!?なんか腹立つんですけど!?」

「依頼内容はこうだ」

「オィイイイ!ちょっと聞いてる!?腹立つっていってんじゃん!!」

「内容は”以後、何があっても俺達を信じろ”」

「・・・っ!?」


しばらく銀時は真剣に自分を見据えてくる瞳を見返していたが、根負けしたようにため息をついて視線を足元へと外す。
くしゃりと自分の髪の毛を掴んでから、視線の先にあった隊服を掴み上げて見つめた。


「・・・・たくよー・・・本当、勝手で横暴で身勝手で・・・・物好きな連中だ」


そう呟いた銀時の瞳は困ったような、しかし嬉しそうでもある複雑な色をこめて細められた。

しばらく見つめていたもう一人の物好きが貸してくれた隊服を、再びその肩へと羽織らせる。
それは先ほどまで背中にあった温もりと同じ暖かさを持っていて。
そんな気恥ずかしさを隠すように、銀時は土方に背を向けた。


「・・・オイ」


静かな呼び止めに、今度はいつものニンマリとした顔で振り向く。


「心配しなくても、仕方ねぇからその依頼受けてやるよ。ただし、報酬はガッツリもらうぜ」

「ふざけんな。・・・テメェへの報酬なんざ、一升瓶一本で十分だ」

「へっ・・・悪くねぇ。んじゃ、ゆっくりお天気注意報でもみてくらァ」

「勝手にしやがれ」


手を後ろ手にヒラヒラさせて退出していった銀時を見送って、土方はいつの間にか完全に燃え尽きていた煙草を捨てて、新たな煙草に火をつける。

深く肺の中に煙をいれてから吐き出すと、ついさっき触れた温もりがまだ残る掌を見つめた。


「・・・・・細ぇ・・・」


想像していたよりもずっと華奢だった身体は儚く。
無意識に漏れた言葉を聴いたものは、誰も居なかった。













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