白銀の月
□第十幕
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気だるげな眼を一瞬だけ思慮深げに細めたかと思うと、それはすぐに進行方向へと向けられて部屋を出て行こうとする。
土方は反射的に身を乗り出して、気がつけばその手は、白く予想以上に細い腕を握り締めていた。
「・・・・何?」
「・・・・っ・・・」
再び振り返った紅い眼は酷く静かな瞳で。
条件反射的に腕を掴んでしまった土方は、されどその手を離すことは出来ず。
かといって次の言葉も浮かばずに、ただ視線を逸らして唇を噛んだ。
何故だ。
いつも腹が立つ程飄々としているこの男が見せる、この静かな目を。
今は直視する事ができない。
襲い掛かる全てのものを、自分一人で背負い込む事を。
その眼はまるでもう決めてしまっているかのようで。
揺らぐことの無い瞳は、彼にそうさせることを、もっと遥か昔から決意させ実行させてきた事実を語っているようで。
誰一人、傷付けさせはしない。
しかしそれは裏を返せば、誰一人彼を護れない事を意味する。
そんな事は認めない。
そんな勝手は認めない。
それならば何故、自分たちはここにいる。
そう思い立ったとき、土方は銀時の腕を力強く引き寄せ、不意をつかれてバランスを崩した銀時の身体を抱きとめた。
勢いに負けて肩から落ちた沖田の隊服は小さな音を立てて畳の上に落ち、土方の手は自分より細身の背中に回される。
「・・・って・・・っちょ!!??お前何してくれてんの!?」
「・・・黙れ」
「黙ってられるかっての!!セクハラで訴えるぞ!!」
「だから・・・!・・・黙れ」
「・・・っ」