炎熊の航路
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ラウが大泣きしてから、やっぱり外にも聞こえているらしく、船員らが静かに心配しながら覗きにやって来る。
その度に悪い、とラウを抱いたまま謝る。
船員の人数が減った頃、俺はラウに話し掛けた。
目ヤバイな…赤くなっちまってやがる。
エース「ラウ、」
ラウ「ラウが‥っ、ラウが、っト、ト‥を‥‥!!」
けれどラウは聞いてくれない。 俺の声が届いていないみてェだ…。
…だからと言って、俺がそのまま引くわけにはいかない。
ラウの気持ちを考えただけでも、胸が痛い…。
父親が大好きという気持ちは、俺には理解し難い事だけれど…家族を失った時の気持ちは、痛い程分かる……。
…だからこそ、俺がどうにかしてやらねェといけねェんだ。
ラウは一人で泣いてんじゃねェ。
でもただ傍にいるだけじゃ、何も解決しない。
ラウ「っく、ぅう‥っっ、ラウの、せい、で‥‥‥トト、が‥!! し、じゃっ! …っんん?!」
俺は、お前を一人にしないって決めた時から…もうお前は、俺の弟≠セから
兄貴≠ェ支えてやらなきゃな。
エースはラウの口を、大きな手で覆い、何も語らなくした。
自分の話を聞いてもらう為に。
エース「…お前が言いたい事は分かったけどよ、それ言ってお前の親父さんは浮かばれるのかよ?」
ラウ「っ‥‥、」
ラウは手を退けようとするが、エースはそれを許さなかった…。
エース「俺は、父親の気持ちなんか分かんねェけど…それでも、そんな事言って浮かばれる父親なら、少なくともお前が言っちまった言葉なんか聞き受けねェよ…!!」
ラウ「っ‥っ‥‥」
話をしている間も、当たり前のように涙は止まらなく、エースの手には、涙やら鼻水やらどんどん付く。
しかし、それでもエースは続け、
そして…――、
エース「それともお前の親父さんは、死んじまったからお前を恨む軽い父親かよ?
んな父親、力が強かろうが関係ねェ!器のちっせークソ親父だよ!!」
ラウ「――!!!!」
ドンっ
エース「っ…!!」
ラウ「っちがう!! トトはすごいのだ!!トトはよわくない!!
トトはラウの!!せかいいちのトトなんだゾ!!!! トトをバカにするなぁ!!!!」
ラウはエースを力一杯突き飛ばし、大きな声で、エースに向かってそう言った。
その反動か、ラウは荒く呼吸をして…エースを睨んでいた。
エース「――…だったらよ、」
ぎゅ…っ
ラウ「!‥」
エース「もう自分責めんの止めろ。 んな事しても、お前の親父さんは喜ばねェ事ぐらい、お前が一番分かってんじゃねェのかよ?」
エースは突き飛ばされた事など何もなかったかのように、ラウを思いっきり、優しく抱き締めた。
ラウ「エー‥ス‥‥っ‥」
エース「世界一のトトの息子なんだろ? ならもう泣かないで、トトの分まで生きてやれよ」
ラウ「!!!!、っひ、ぐ‥ぐ‥っう‥‥っ‥!! …ん゛!!」
エースの言葉が届いてくれたのか…ラウは涙を拭き、鼻声で返事をしてくれ、エースは撫でながらラウに微笑んでいた。