妖狐の煌

□22、序章
1ページ/3ページ




ロールがこの船に帰って来て、わずか数ヶ月。


平和だった日々に、再び悪夢が襲い掛かって来た…。




目の前で、家族が消えた。



何度…何度、名前を叫んでも、応えてくれなくて。


事実を受け入れると虚しくて。

気持ちが狂いそうで。

自分が壊れちまいそうで…。



また、同じ事を繰り返してしまった事になるなんて……。




目の前で消えたってのに、


何も出来なかった自分が、本当に憎い…――。










エース「……………親父…」


白ひげ「…………」




ここは白ひげの部屋。

白ひげはエースに呼ばれ、チラッと見るが、すぐに目線を戻し酒をぐびっ、と一口飲む。


いつもと違って緊迫した雰囲気。

だが、それは雰囲気だけではなかった…。



いつもなら絶対あり得ない光景が、今ここにあるからだ。







エース「――……っ…、錠を、外せ…親父…!!」



…そう、エースの腕には海楼石が練り込まれた手錠がしてあるのだ。


そして動けないようにしているのか、鎖までもが、エースを縛り上げていた。

そんな状況にも関わらず、白ひげはエースを解放する事はなかった。




白ひげ「黙ってろエース、そこで大人しくしていァがれ…」


エース「っ……い、いから…!外せよ…!!」



エースは無意味と思っていても白ひげを睨み付け、外せと懇願。

…しかし、白ひげも外さないの一点張りであった。




エース「っ…外せって言ってんだろうが!!! 俺は――!!!」


白ひげ「…………」




エースの声は、部屋中に鳴り響く。 叫んでも、残るのは虚しさだけ……。

白ひげはそんなエースの言葉を聞き入れる事なく、荒んだ空を、見上げていた…――。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ