総隊長と家族

□68 戴冠式
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昼頃。
戴冠式が行われた。

民衆は赤のカーペットを囲み、それは噴水広場まで続いている。



そして、アデル…フィンが出て来た時には歓声が上がった。

ゼウスの若い頃の写し身のようだ、立派なお姿になられた等があちこちから飛び交う。


フィンがゆっくりと噴水広場へと着いた。








その時だった。



?「その式ちょっと待ったァア!!


『!!!!?』




どこからかそう聞こえ、民衆はなんだなんだとザワついた。

そして一人の男がずっと先…海方面の噴水広場から一番遠い所に突っ立っている者を見つけた。



…サッチであった。

だがフィンはサッチを見ても特に変わった表情はなかった……。



「何だ貴様!」



と、一人の兵が言った。



サッチ「俺はえっと…あれだ!とある海賊の船長の右腕なのだ!!!」


「とある海賊…!?」


「海賊って…、どこに仲間がいるんだか」


「一体何が目的だ!」


サッチ「目的ィ?決まってんだろうが!


…、アデル王子を攫いに来たんだよ!!」


『!!!!?』


フィン「……」



アデルを攫いに来た海賊…そう聞いて民衆はザワついた。

すると…、



ゼウス「海賊とやら、アデルをそうやすやすと渡す訳にはいかんな」


サッチ「だったら力ずくで奪うまでだ!」



ダッ!!



サッチは走り出した。
兵士たちはそれを阻止しようとサッチのもとに向かったが……



ボワッ!



『!』


エース「悪ィな、邪魔しないでくれ」


ハルタ「というより、動かないで」



兵士の前に2人の男たち。

それは他の所にいた兵士たちもそうだった。







一方、こちらはサッチ。



タッタッタ!!



サッチ「っ俺はお前を攫おうとするが、それは一度だけだ」


フィン「……」


サッチ「お前が今っ、俺をどう思ってんのか分かんねーけど」



ガヤガヤ…



サッチ「でもな!俺はそれでも構わねェ!!!お前がもう一度!海に出たいって言えば俺は何度だって連れ出してやる!!!!」


フィン「……、」


サッチ「一度だけ言うぞ!“フィン”!! 海出たいって気持ちあるなら!まだ俺たちと居てェなら!!
俺に大人しく攫われろ!!!


フィン「……!!」



………


……






おれは……っ…、





フィン「行き…たい…っ」


サッチ「!」


フィン「別れたくない…っ…、置いてっ…、行かないで…!! まだおれ!!みんなといたい!!!!



ギュッ…!!



フィンは自分の足で、サッチのもとに来て、泣きながらサッチを抱きしめた。



サッチ「俺だって、別れたくねェよ…っ、」


フィン「っ、ヒク…、」



マルコ「おいサッチ!とっとと走れよい!!」


ハルタ「置いてっちゃうよ〜!」


サッチ「わーってるよ!!

フィン、走れっか?」


フィン「っうん…!!」




フィンたちは走り出し、海岸方面に走って行った。

途中で兵士たちが邪魔をするも、フィンたちの走りは止まらなかった。


赤い色のカーペットに残されたのは走っている時に脱ぎ捨てられた王族の服だけであった…。
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