ちよこれいと
□やっと見つけた、
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「わぁ、このお話かわいい」
波音がうっとりとした声で呟いた。
レポート用紙を見つめる瞳がキラキラしている。
ぶっちゃけ、小説より波音の方がかわいいわ…!!と、思う。
「ねぇねぇ、波音たんなに読んでんの?」
こちらもまた、キラキラした瞳の希が聞いた。
てか、そんな力込めてレポート用紙握んじゃないわよ、皺になっちゃうでしょうが。
「あのね、女の子がお友達のためにビーズの指輪を作ってあげるお話だよ。
女の子がすっごく不器用さんなんだけど、お友達のためにお母さんに作り方を教えてもらって頑張って作ってて、かわいいの!」
その不器用さんな女の子に自分を重ねちゃったよと照れ笑いしてる波音が可愛すぎて悶えてると、棗が口を開いた。
「あ、それ俺も読んだ。主人公が友達に似合う色とか考えてるとこ、好き」
持っているレポート用紙から目を離さずに棗が言うと、波音がそこもかわいかったねって笑う。
希が棗ちんかわいい子好きだもんねーと言うと、棗が人を女好きみたいに言うなと希を睨む。
びくっと、希は体を揺らし話しをそらすように、棗ちんはなに読んでんのと震える声で聞いた。
棗は話しをそらしやがってと言いたげな目で希をみた後、言った。
「画家の鉛筆の話」
「はぁ?画家の話?」
「ちげーよ、画家の鉛筆が主人公の話」
理解が全くできないと顔に書いてある希に、棗がため息を一度つくと、説明しだした。
「画家が絵の下書きに使う鉛筆の話で、鉛筆が自分は絵の主役になれないけど、画家が描く絵の役にたてて喜んでんだよ。
けど、鉛筆なんて、削りゃぁちっこくなんだろ?
そんで、鉛筆が小さくなってもう絵描くのに使ってもらいなくなると思ったら、画家が本当に鉛筆がなくなるまで、鉛筆を主役にして自画像を描いて、鉛筆が最後まで幸せだっていう話」
棗が説明し終わり、希にわかったかと言いながら、目を向けるとぎょっとしたまま固まった。
私もそちらを見るとあらっと声が溢れた。
「うぅ、画家ええ人…」
「ひっく、え、鉛筆さんは最後まで画家さんの役にたてて幸せだったんだね…」
波音と希がぼろぼろ涙を溢しながら、画家いい人やら、鉛筆健気などと話していた。
希がティッシュの箱をとり、ティッシュを数枚引き抜くとずびーーっとはなをかんだ。
一応女の子なんだから、もっと静かにやりなさいよと思いながら、希にあんたはなに読んでんのよ?と言ったら、希は待ってましたとばかりに笑いながら、喋りだした。
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