ガールズ ビー アンビシャス!!
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Side:波音
四月。
寒い寒い冬が終わって、桜の綺麗な季節が今年もやってきた。
私星城波音は、この度、めでたく早乙女学園に入学することが出来ました。
今日は入学式。
式が始まる前にクラスを確認してこいと指示があったから、確認しに来てるんだけど…
「み、見えない…」
掲示板の前に人がたくさんいて全く見えない。
どうしよう…とりあえず、この人混みに立ち向かってみよう!
「す、すみませ…、ちょっと通してくださっ、きゃっ!」
無理でした。思いっきり跳ね返されました。
うぅ…痛い、弾き出された弾みで尻餅をついてしまったらしい。
私はその場にへたり込んでしまった。
「大丈夫?」
「え?」
ふいに、目の前に手が差し出された。
驚いて顔を上げると、そこには、赤い髪の男の子。
「立てる?結構派手に転んでたけど…」
「あっ、は、はい!ありがとうございます!」
慌てて立ち上がろうとすると、男の子が手を引いて手伝ってくれた。
同い年くらいかな…でも、背高いし、年上の人かも。
スカートの裾を払ってから、改めてお礼を言う。
「あのっ、ありがとうございました!」
「いいよいいよ!気にしないで!
でも、これじゃクラス確認出来ないね…」
「あ…」
そういえば、どうしよう。
掲示板の目の前には依然として、たくさんの人がいるままだった。
二人して少し考えていると、そうだ!と男の子が声を上げた。
そして、再び私の手を握り人混みへと歩き出す。
「え!?あ、あの…!?」
「大丈夫!俺に任せて!」
そう言って人混みに入っていく。
すごい…私が吹っ飛ばされた人の壁の中をいとも簡単に進んでゆく。
そしてある程度進んだ所で、足を止めた。
「…よし、この辺でいっか!ちょっと我慢してね」
「え?………わっ!?」
男の子が私の足元でしゃがんだかと思ったら、視界が一気に開けた。
…も、持ち上げられてる…?
「どう?これで見えない?」
「あ…はい!見えます!」
なる程、これならよく見える。
ちょっと恥ずかしいけど、私の為にしてもらってるんだからちゃんと探さないと。
えっと……せ…せ………あ、
「あった!ありました!」
「ほんと!?よかった、じゃあ降ろすよ」
ゆっくりとその場に降ろされる。
そして再度私の手を引き、人混みから抜け出した。
抜けた先のベンチに腰を下ろした。
「あの、何度も助けていただいてありがとうございます」
「へへ、どういたしまして!
あっ、そういえば何クラスだった?」
「えっと…Sクラスです」
「あー、違うクラスだね…俺はAクラスなんだー」
「あ…」
違うんだ…
せっかく知り合えたのに…同じクラスがよかったなぁ。
ん?あれ…そういえば、
「あの、お名前、聞いてもいいですか?」
「あ!ごめん、言って無かったね。
俺は一十木音也!よろしくね!君は?」
「星城波音です。よろしくお願いします!
…あ、一応15歳です」
「え、同い年じゃん!」
「え!?」
せ、背が高いから年上かと思ってた…
いい人だし。
「ご、ごめんなさい。てっきり年上の方かと…」
「俺も、敬語で話してくるからてっきり年下かと……なんだぁ、じゃあ普通にしゃべろう!」
「わかった!えっと…一十木君?」
「うん!クラス違うけど、よろしく!星城……って、苗字長いから、波音って呼んでいい?」
「うん、もちろん!こちらこそ、よろしくね!」
そう言って手を差し出すと、一十木君も笑って握ってくれた。握手。
わぁ…この学校で出来た、初めてのお友達ってことだよね?
よかった、お友達出来るか不安だったけど、ちゃんと出来た。
嬉しくて頬が緩む。
これからのここでの生活が、すっごく楽しみになってきた。
パパ、ママ、お兄ちゃん、ハトさん達、私ここで頑張れそうです。
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