飴色ぷらとにっく
□4話
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「えーっと、こっちでいいんですかね?」
とことこ歩きながら雨音は呟いた。
結局彼女は青葉城西高校の受験を受けることができなかった。
そのことを担任の冴美に話したら<じゃあ、烏野いけ>といわれ、
あれよあれよと話が進み試験当日。
雨音は迷子になっていた。
彼女は特別な方向音痴という訳ではない、1度行った場所なら
なんとなく行けるとそれなりに記憶力もいいほう。
だけど、
「地図の下が北なんですよね…?だから、次の曲がり角は右でしょうか?」
そう、地図が読めない。
雨音は基本勉強はなんでもできるし、嫌いではない。
だが、どうしてか地図だけはどうにも苦手だった。
今までは普通に行けた場所でも、地図を見た瞬間辿り着けなくなる。
例えそれが学校や、幼馴染の弧爪や黒尾の家。
挙句の果てには自分の家でも迷子になる。
そのたびに、兄の陽人や黒尾などの年長組が見つけてくれたものの、
今は二人共東京なので、見つけてくれる人はいない。
ここまでの方向音痴、いや地図音痴も珍しいことだ。
これで初めていく場所にしても、地図さえ見なければ目的地に着くので不思議だ。
そんな訳で、見慣れない土地で、読めない地図を読みながら
知らない場所に辿り着ける確率は多分宝くじが当たる確率と同じ位低い。
ちらっと左手首についているベルトの細い淡い桃色の腕時計を見ると、
そろそろ受験の時間が迫っている。
「うぁ、どうしましょう…」
軽くパニックになり、頭を抱えてしゃがみこむ。
「ねぇ、どうかしたの?」
「へ?」
ぽんっと肩をたたかれ、振り返るとメガネをかけた美人がいた。
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