ガールズ ビー アンビシャス!!

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Side:麗




天使が、話しかけてきます。




「あのっ、今日からお隣さんだね!えっ、えっと…お名前、聞いてもいいですか?」




かんわいいいいいいいいいいいいいいいいいい( (

可愛い!何なのこの子!
たった一回話しかけてきただけで、ここまで私の心を鷲掴みするとは…
しかも容姿も超好みだわ。
さすが芸能専門学校、レベルが高い。

私が無表情で黙り込んでいたせいか、目の前の天使が「あ、あの…?」と不安そうに声をかけてきた。
ああ、違うのよ。ちょっと貴女にときめいていただけなの←




「…私は雪平麗。貴女は?」

「! せっ、星城波音といいますっ、よろしくお願いします!」

「よろしくね。それと、敬語じゃなくていいわ。たぶん同い年だし」

「えっ!?」




案の定彼女は驚いた顔をした。
そりゃ、大半の人が今15歳なんじゃないかしら。
「大人っぽいし、背が高いから年上かと思っちゃった…」と照れながら言うのを見たら、そんなことどうでもよくなっちゃったけど。




「じゃ、じゃあ麗ちゃん、って呼んでもいいかな?」

「ええ。私も波音って呼んでいいかしら?」

「うんっ!」




あ"ああああああああああああああああマジ天使ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!

こんな学校さっさと辞めてやろうと思ってたけど、考えを改めるわ!
私、もっと側でこの子を見ていたい。
ていうか愛でたい!

それから波音と基本的な自己紹介をしあっていると、前方のドアから担任らしき教師が入ってきた。
チッ、邪魔しやがって…




***




「麗ちゃんっ、一緒にご飯食べに行かない?」

「ええ。行きましょうか」




長ったらしい自己紹介の時間が終わり、今日は解散になった。
お昼時なので、波音に昼食に誘われる。
波音の誘いを断る奴って、この世にいるのかしら。

席を立ち、話しながら出口へと向かう。
「それでねっ」とニコニコしながら実家で飼っている鳩の話をする波音は文句なしに可愛い。
ていうか、鳩を飼っている人なんて初めて見たわ。珍しい。




「そしたらね、ハト三郎さんが…きゃっ」




ちょうど波音が出口を出ると同時に、何かとぶつかった。
反動でふらついた彼女を、咄嗟に受け止める。
数秒ぼうっとしていたけど、すぐに我に返り相手に謝る。
…見るからに嫌な感じの男ね。




「あっ…ご、ごめんなさい!お怪我はありませんか?」

「…いえ」




無愛想にそう返すと、すぐに波音の横を通り抜けようとする。
…は?何よそれ。




「ちょっとアンタ」




振り返ってそいつを呼び止める。
いや、有り得ないでしょう。今の。
どんだけ態度悪いのよ。




「…何か?」

「『何か?』じゃないわよ。
 こっちはちゃんと謝ってんのに、何でアンタは謝らない訳?」

「…急に出てきたのは、そちらでしょう」

「いいえ、出てきたのはほぼ同じタイミングだったわ。
 大体、そんなことどうでもいいのよ。常識的に考えてお互いに謝るのが普通でしょうが」

「そんな常識は、聞いたことがありませんが」

「はぁ?どんな教育受けてんのよ」

「何ですって?」

「おい!落ち着けってお前ら!」




口論がヒートアップしかけたところに思わぬ邪魔が入る。
私と奴の間に割り込んできたのは、何だか小さい男だった。




「お前ら入学早々喧嘩すんなよ…早くも処分食らいたいのか?
 つーか、当事者ほっぽりだしてんぞ」




くいっと、手を後方に向ける。
そこには非常にオロオロしている波音がいた。
…いや、忘れていた訳じゃないのよ?




「…今日はこのくらいにしておいてあげるわ。そこのおチビちゃんに感謝することね」

「誰がチビだコラ」

「それはこちらのセリフです。小さな方に感謝するのは貴女の方です」

「ってお前もかよ!!」





何故か小さな奴が弄ばれていた。
いや、何かイジりやすい雰囲気が滲み出てるのよ。

もう一度睨み合ってから、胸くそ悪くなったのでお互いに『フンッ』と顔を背ける。
そして奴がそのまま背を向けたので、この場はこれで終わりとなった。




「チッ…いけ好かない男ね。さっさとハゲてしまえばいいのよ」

「何てこと言うんだお前」

「おチビちゃんも、ああいう輩には気を付けるのよ」

「だから!誰がおチビちゃんだ!!俺には来栖翔って名前があんだよ!!」

「ふーん」

「心底どうでも良さそうな顔すんな!」




結構面白いわねこのちびっ子。
少なくとも、あのクソ野郎より何倍も生きている価値があると思うわ。

そんなことを思っていたら、波音がこちらに寄ってきた。




「麗ちゃん、ありがとう」

「ああ、いいのよ。気にしないで。
 それよりも、次からは出る時人がいないか注意してね」

「うん、気をつけます。
 それと、来栖君もありがとう」

「おう。気にすんな」




私とチビの言葉に素直に頷く波音。うん、貴女本当にいい子ね!
そう、普通はお互いこれくらい謙虚な態度を取るべきなのよ。




「じゃあ、気を取り直して。行きましょうか」

「うんっ!」

「あー、俺も飯食いに行こっかな」

「何よ、着いてくんじゃないわよ」

「別に着いてく訳じゃねぇよ!
 つーかひでぇ言い草だな!!」

「まぁまぁ麗ちゃん。来栖君も、一緒にご飯食べよ?」




にっこりとチビにそう提案する。
「お、いいのか?」とまんざらでもないようにチビが言うともちろん!と波音が頷く。
チビが女顔だからか、女の子同士の会話に見えるわね。何だか和む。
うん、さっきの髪型がウーパールーパーみたいな奴なんかもうどうでもいいわ←

頭の中からそいつの存在を抹消しつつ、再び歩き出した。


…これからの学園生活が、奴のせいでめちゃくちゃになるとも知らずに。





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