ガールズ ビー アンビシャス!!

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Side:棗




何なんだこの学校は…


本当、この一言に尽きる。

部活も引退し、そろそろ受験校決めなきゃなーと思い始めた頃、元来頭のネジの緩い母親が急に『そうだ!棗ちゃんもアイドルになればいいのよ!!(キラキラ)』と訳のわからないことを抜かしだした。
嫌がる俺をガン無視し、無理やり受験させられたかと思えば何故か合格。俺は強制的に上京。
そして入学式では校長が空を舞い、担任はオカマ。
更にクラスメイトは自己紹介の時に隣の席の奴に公開告白をかますキチガイときた。これはドン引いた。


もう一度言おう。




何 な ん だ こ の 学 校 は !




先が思いやられる。




***




唯一の救いは、学食(と呼んでいいのか)がべらぼうに美味しいことぐらいだろうか。
目の前のラーメンを啜りながらそんなことを思う。うん、旨い。
さすが施設にめちゃくちゃ金をかけているだけのことはあるな。

不意に、テーブルの上に影が落ちた。
何事かと思い顔を上げると、そこには公開告白をかましたあのアホ女が立っていた。…何でだ。
俺が(恐らくしかめっ面をしながら)そいつを見ていると、満面の笑みで話しかけてきた。




「ねぇねぇ!一緒に食べてもいい?」

「………嫌だ」

「えぇー!?何でー!?」

「何でって…そりゃお前、アホと友達と思われたくないからだよ」

「何それひどっ!」

「つー訳で、どっか行ってくれ」

「むぅ……や!」

「あ"ぁ?」




『や!』って何だよ殴るぞ。
少し構ってやったんだから満足して失せてくれ。
しかし俺の願いも虚しく、そいつは俺の目の前に腰を降ろした。
おい、誰がいつ座っていいっつった。




「まぁまぁ、そんな怖い顔しないでよー。
 これから一緒に生活するんだし、仲良くしよーZE☆」

「断る」

「ケチー」

「何とでも言え」

「! じゃあこれから【冷徹マン棗っち】って呼んであげるね!」

「お前ネーミングセンス無さ過ぎだろ!!」

「フッ…この美しいセンスがわからないなんて、まだまだだね(ドヤァ」

「吊すz………ん?」




ちょっと待て、




「お前、何で俺の名前…?」

「ん?あり?風上棗ちゃんじゃなかったっけ?」

「いや合ってるけど…お前、他の奴の自己紹介はほとんど聞いて無さげだったろ」

「あぁ、ダンボールに書いてあったから」




………ダンボール?




「もしかして知らない?
 ボクと棗っち、同じ部屋なんだよ!」

「は?」

「だからー、寮で一緒に暮らす、ルームメイトだってこと☆」

「…………はぁああああああああああああ!!!?」





嫌だ嫌だ嫌だ!
何でこんな人の話を全く聞かないような奴と一緒に生活しなきゃなんねぇんだ!!




「ちなみにー、ルームメイトもう一人いるよん!
 ボクもまだ会ったこと無いから、どんな子か知らないけど!」

「マジかよ…」




しかも三人部屋かよ。
コイツの被害者がもう一人増えるのか…可哀想に。
…いや、コイツと同じくらい厄介な奴かもしれねぇ。




「名前がわかったは良いけど、顔はわかんなかったから林檎ちゃんに聞いたんだー。
 そしたら、『女の子にしてはかっこいい子』って言われたからすぐにわかったんだよ!」

「…何じゃそりゃ」

「だからさ!お友達になろーよー、ねっ!仲良い方が楽しいしさ!」




…まぁ、確かに。ルームメイトだしな。
部屋に帰っても居心地が悪いなんてそれこそ嫌になる。




「…しゃぁねぇな。ま、サンドバックくらいには思っといてやるよ」

「えぇ!?やだよ!!」

「で?お前、名前何ていうんだよ」

「自分こそ他人の自己紹介聞いてないじゃん!
 …ボクは虹原希!よろしく棗っち!」

「おう。よろしくサンドバック」

「サンドバック違う」




割とイジると面白いなコイツ。
暇な時はイジって遊んでやろう。あと殴る←
そんなことを考えていると「そういえばご飯頼んで無かった!」ととんでもなく今更なことを言い出した。
頼んでくるね!とサンドバックが席を立つ。
その後ろ姿を無言で見送る。

…何でこんなことになってんだ…?

大きな溜め息が漏れた。
すると今度は背後から声をかけられる。




「楽しそうだったね」

「はぁ?」




振りかえると、いかにもチャラそうな男が真後ろの席に座っていた。
何なんだ今日は、変な奴にばっか絡まれるな。




「今のやり取りのどこが楽しそうだったんだよ。
 つーか、人の会話盗み聞きか?趣味悪いな」

「ごめんよ。盗み聞きするつもりは無かったんだけど、あまりにも楽しそうだったからつい」

「だから、どこがだよ」

「フフッ、素直じゃないねレディ。
 今度はオレとも一緒に食べてよ、じゃ、またね」

「は?ちょ、おい!」




そう言うと、颯爽と席を後にしてしまった。
…………“レディ”って何だよ気持ち悪いなアイツ……鳥肌立ったわ…

言いようの無い寒気に体を震わせていると「おっ待たせー!」と希が戻ってきた。
昼飯を手に入れてご満悦のようだ。
ニコニコと笑っている顔にイラついたので、記念すべき一発目を容赦なく希の脳天にかました。





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