銀魂・長編 2
□第一章『墓参り』
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「準備はできたか?銀時」
桂は万事屋にいた。
「あぁ、」
何故か?
それは桂は自分の師であり銀時の師でもある吉田松陽の墓参りにいくためだった。
もう1人、今では肩を並べるなど叶う事のなくなった攘夷浪士の高杉晋助の師でもあった。
高杉晋助は過激派だ、
そもそも彼が世界を破壊したいと思っているのは
師の吉田松陽が殺されたからである、
銀時、桂、高杉の3人は幼いころからの幼馴染だ、
吉田松陽は私塾を開いていた。
そこで3人は出会った。
高杉と桂は普通の暮らしをしていた、
しかも高杉は金持ちでいわゆるボンボンだ。
だが銀時は違った。
普通の暮らし、ではなかったのだ。
戦場にいた、鬼子と言われていた、刀を持っていた、死体の上に座っていた、
銀時は少しおかしかった、彼をおかしくさせてしまったのは他でもなく
世界、
銀髪に赤目、珍しかった。銀時の生まれた時代では黒髪、黒目が当たり前だった、天人はまだおらず、攘夷戦争もすでに始まっていた。
珍しかった、その姿に両親は銀時を捨てたのだ
それから銀時は迫害を受け始めた。
子供からは石を投げられ
陰口を言われ、
大人には殺されそうになったりなど
世間は銀時に対して残酷なほどに冷たかった。
大人に子供がかなうはずがない、
だが銀時は考えた、
ころされないためには
ころすしかない。
銀時は刀を手にとった、そして人を斬った。
血が銀時の身体に飛ぶ
罪悪感など幼い彼にはなかった、
あったとしても考えている暇などなかった
殺さなければ殺される。
人間の本能である生への執着が小さな10にも満たない子供を突き動かした。
そこで銀時は吉田松陽に出会った。
死体の上に座り、死体からとった握り飯をもくもくと食べる。
ぽん、頭に手が置かれる。
気配がなかった、
「屍を食らう鬼が出るときいて来てみれば・・君がそう?またずい分とカワイイ鬼がいたものですね」
銀時は慌てて手を払い距離をとった、
死体からとった刀を抜く、錆びれ、血がついた刀を。
「刀(それ)も屍からはぎとったんですか、童一人で屍の身ぐるみをはぎそうして自分の身を護ってきたんですか」
銀時は無言だ。
「たいしたもんじゃないですか」
「だけど」
「そんな剣もういりませんよ他人におびえ自分を護るためだけにふるう剣なんてもう捨てちゃいなさい」
松陽は腰の刀に手をかけた。
銀時は目を鋭くした。
「(こいつも俺、を)」
殺しにきたのか、
銀時は歯を噛みしめたその時、松陽は刀を鞘ごと腰からとり、銀時に放りなげた。
銀時は大きく、重い松陽の刀を身体で受け止めた。
ぽかん、とする。
「くれてあげますよ私の剣
剣の本当の使い方をしりたきゃ付いてくるといい、これからは剣をふるいなさい
敵を斬るためではない、弱き己を斬るために
己を護るのではない、己の魂を護るために」
銀時は松陽についていった。
この人なら、何故か信用できるような気がした。