キミは僕のポラリス(ブック)

□紅茶のお味は恋の味?
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「暇だね」
「暇だな」
「けど魚を釣らなければ僕らの任務は達成されない」
「そうはいっても暇だ」
「うん、暇だね」

船上でのある一コマ。ハルとアイクは夕食となる魚を得るため、その長い長い釣り糸を海に向かって垂らしていた。ただじっと、魚が釣り針に引っかかるまで待つのは結構辛いものがある。

特に、暇さえあれば自主訓練に励んでいたアイクは、この緩い時間の流れにたまに眠たげに首を上下させている。しかし竿を握る手を緩めるわけにはいかないため、眠気を必死に堪えながらも暇な時間を持て余していたのだ。早く魚を釣って訓練に励みたいと思うものの、今アイクとハルが釣り上げた魚の量では到底この船に居る人数分の腹の足しにはならない。

「かれこれ30分弱、こうやって釣り糸を垂らしているがさすがの僕もつまらなくなってきちゃったよ。ねえ、団長。暇人同士、僕とおしゃべりってやつをしないかい?」
「……そうだな。アンタとは一度きちんと話をしてみたかったし、いい機会だ」

アイクの言葉にハルは少しだけ目を見張る。正直今のは冗談半分の台詞であったのだ。僕と話がしたいだなんて面白い奴だなあと思うも、ハルはこのバカがつくほど正直で素直な少年に悪い印象を持っていなかったため、すぐに破顔し頷いた。

「とはいっても、改めておしゃべりしようと思うと意外と話題というのは出てこないよね」
「なら、質問形式にして答えていくってのはどうだ?俺はハルに聞きたいことがあるから、答えてくれるなら嬉しい」
「おお、それはいい考えだね!さて団長、僕に聞きたいことがあるらしいから君から先に質問しておくれよ」
「ああ。まず聞きたいのは、あんたの剣の技術についてだ」
「僕の剣の技術かい?」

なんとなく予想していた通りの質問がきて、ハルはにやりと笑った。アイクはハルの戦い方に興味があるのか、たまに剣の訓練をしているハルの姿をじっと見つめることがあったのである。

「ハル、あんたの剣の技術は一体誰に教わったんだ?荒々しく型が無いように見えるが、それをモノにしている戦いぶり…興味がある」
「いやあ、照れるなあ。だがね、団長。僕は誰からも剣を教わってないよ」
「……なに?」

ハルの返答に、アイクは眉根を寄せた。



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