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□見放されればそれで最後
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ゆるゆるふわふわ
暖かい空気を纏い、穏やかな口調で話す。少々鈍くさいところもあるが、敵には容赦しない。…それが忍術学園唯一のくの一教室六年生、柊花音の性格だった。

だからだろうか?
誰も彼女が怒ったり怒鳴ったりしたのを聞いたことも無いし見たこと無い。
下級生や後輩が間違った事をしたら優しく諭す。何がいけないのか、キチンと自覚させるのが彼女のやり方であった。

そんな彼女もやはり人間。
ぷっつんと堪忍袋の緒が切れた。


「うるさいですね。きゃんきゃん吠えて、まるで犬のよう。わたくし、残念ながらかの有名な聖徳太子のように1度に10人の人物のお話を整理しお返事する能力なぞこれっぽっちも御座いませんわ。それにしてもよろしくて?1度に1人の人間に話を投げ掛けるというのは実によくありません。何故かお分かり?ああもちろん分かりませんでしょうね。なぜなら貴方逹は自分逹だけ喋り捲し立てているのですから。相手の話を聞く。相手を思いやる。そんなこともできないならば1年生からやり直していらっしゃいな。あらあら何を呆けているの?大体、女子の肩をいきなり掴み『どういうことだ』とは何事です。わたくしの方こそどういうことだと問い返したく思いますわ。物事には順序がございますのよ。主語や述語という言葉もお忘れになりましたの?さあ、もう1度言ってご覧なさい。あら言えないの?どうしてかしら?先程までわたくしに訳の分からないことを言い責めあげたくせに、今度は喋ることもままならないとは…。まあ、情けのう御座いますこと」


そうしてゆっくりとお茶を飲んだ花音は、小さく微笑んだ。




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