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□第三者のお姉さん
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(※猿→美前提注意)





「美咲も相当だけれど、猿くんもなかなか不器用だよねぇ」
「は?」

にこにこと笑いながらそう言い放ったのは、八田の姉。たまたま伏見が外食をしようとふらふら街を歩いているところを捕まえられ、近くの洋食店へと連れてこられたのだ。もちろんここに引っ張り込んできた張本人の奢りである。細かく切られた野菜をいつも通り器用にスプーンでよけながら、ふわとろ卵のオムライスを口に運ぶ伏見。ちなみに彼女はナポリタンを頼んだ。ケチャップが好きなんだ、と以前言っていたような気がするが、それのせいかは分からない。

「うん。美味しい」
「…………」

先程の台詞の続き、ではなく目の前のナポリタンの味の感想を言って再びナポリタンを口に運ぶ。自分の「は?」という疑問の問いかけに答えてくれないようだと察した伏見は、自分もオムライスの続きを食べようとした。と、その時。

「うん。だからね、猿くんも不器用だなあって」
「…………はぁ」

突然話し始めて、スプーンに乗った1口分を口に入れるタイミングを見誤ってしまった。昔からそうだ。彼女の話すテンポというのは、ちょっとおかしい。そのため肩透かしを食らってしまうこともしばしばだ。しかし慣れというか諦めているというか。特に彼女に何かを言うでもなく、伏見は先程口に入れることができなかった分をぱくりと食べたのである。

「美咲は基本的に単純で猪突猛進だから、不器用とかそういう概念自体無さそうだけれど、でも君は『特別』なんだよ猿くん。猿くん、君もそうだ。君も不器用とか器用とか、それにあてはまるタイプの人間じゃない。けど、やっぱり『特別』な美咲に対しては違う。ふふ、君達は正反対のようでそっくりさんだ」
「…そんなんじゃないですよ」
「心配しなくてもいいよー。私は君達のケンカに首を突っ込んだりしないから!子どものケンカに大人が入っちゃダメだからね」
「………ハァ」

思わず、伏見の口から小さい溜め息が出た。この人は自分達の現在の状況をただ一言「ケンカ」だと言う。けれどそれは違う。これはそんな、『友人同士』の果ての結果ではないのだ。すくなくとも、伏見にとっては。

「…あのね、猿くん。第三者って、意外と色んなものが見えてるんだよ。言わなくても、分かったりするんだよ。特に猿くんは、顔に、行動に、出て無いようで出ちゃってるから。美咲には分からなくても、周りには結構バレバレ。君は今の自分に満足してるのかもしれないけど、それは本当?私には、君が泣いているように見えるなあ」


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