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□原点にして、頂点
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「知っていたよ。ずっとシロガネ山の麓で僕を待っていたことを。でも、駄目なんだ。僕はカノンに会うことができない」
すっ、と静かに涙を流すレッドさん。
カノンさんというのは、きっとあの人のことだろう。
レッドさんを一番に思っている人。
レッドさんを一番大切に思っている人。
でもそれは、レッドさんも同じなんだ。
この人はカノンさんを一番に思っている。
この人はカノンさんを一番大切に思っている。
モンスターボールを高らかに投げ、レッドさんは自分のポケモンを出した。
リザードンに、カメックスに、フシギバナ、カビゴン、ラプラス、…そしてピカチュウ。
彼らを優しく丁寧に撫でているレッドさん。
それなのに、何故か彼らは涙をポロポロと流していた。
どうして、どうして泣くのだろう。
「リザードン、カメックス、フシギバナ、カビゴン、ラプラス、ピカチュウ。僕の変わりにカノンの傍にいてやってくれ。お前達も覚えているだろう、あいつが、結構泣き虫だってこと」
「何で、そんなこと言うんですか…!僕はカノンさんと約束したんですっ!あなたを連れて帰るって!あなたじゃないと、カノンさんの寂しさは、埋めれないんです!」
「…知っている。カノンは、僕がいないと駄目なんだ。僕じゃないと、カノンは駄目で、僕もカノンじゃないと駄目なんだ。それでも…僕はカノンから離れるよ」
「何で…っ!」
「何で…。何で、だろうね。それはきっと、僕がカノンのことが大好きだからだよ」
じゃあね、楽しいバトルをありがとう、ヒビキ。
「待っ…、うわっ!?」
急に起こった突風、なぜか視界が真っ暗になる。
慌てて目を開いた先には、6個のモンスターボールと、でんきだまが置いてあった。
原点にして、頂点
2010/08/10