歪愛

□蝕に食われる
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『…そういえば真宵は他の人間が作る食事を取るのが一番好きだと言っていたな。けれど自分でも作るんだろう?どんな料理を作るんだ?』
「うーん、結構なんでも作るよ。世界中には美味しい料理がたーっくさんあるから、色んな料理に挑戦してみたくなるんだよね。最近はアクアパッツァに嵌ってんの。あれね、肉でも魚でもどっちでも超美味しくって」

アクアパッツァ。イタリアの魚介の煮込み料理ではなかっただろうか。それを魚の代わりに肉を煮込むのは、それはそれで美味しそうだ。今度作ってみようかな。私も真宵を見習って色々な料理に挑戦したいと思っていたところであるし、丁度いいかもしれない。

『はは、真宵の恋人になった男は色んな料理が食べることができてさぞかし幸せなやつになるな。羨ましい限りだ。…真宵?』
「んー…んふふ、さあて一概にはそうはいかないんじゃないかな。だって私と結婚したら超食費かかるよ?今でも結構ジリ貧なのにさあ」
『そ、そうか…』

正直、ギクリとした。私の、先ほどの言葉のどこの部分が彼女の地雷を踏み抜いたかのか分からないが、一瞬、真宵の表情がごっそりと抜け落ちた。すぐに表情は戻っていつも通りに戻ったが…。まだまだ私には、真宵の知らない部分がたくさんあるらしい。カニタマを食べ終わり、出してやった焼きプリンを満面の笑みで食べている彼女を見て私はそう痛感した。

なあ、真宵。お前の「食」は、本当にお前のことを満たしてくれているのか?満たされない何かを食べることで補い続けているのは、正しい処置方法なのか?私は、本当に満たしてくれる何かでお前を満たしてやらなければいけない気がするんだ。なあ、真宵。本当は満たされていないなにかが「食」で補えないことを分かっていてお前が食べ続けているのであれば、私はお前がひどく恐ろしくて、可哀そうだよ。










蝕に食われる

2016/03/01

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