歪愛

□蝕に食われる
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「カ・ニ・タ・マ〜!」
『遠慮はいらないからたくさん食べてくれ』
「いっただっきまーす!」

だから私はあの子に会うと、何かしら食べ物をあげている。傍から見るとまるで餌付けのようなその行為は、私にとってとても大事な日課となった。少しでも満たされますように。そう思いながら与える食糧は、掃除機のように口の中に吸い込まれていく。それを眺めながら、ああ、今日もダメだなあ。なんて。

…え?どうして私があの子をこんなにも気にしているのか気になるって?…そうだなあ。ただの好奇心、ってやつかもしれない。私は真宵みたいに『食べる』という行為をしないから、あれだけよく食べる真宵がもの珍しいというかなんというか。彼女を満たさないものっていったい何なんだろうか。そんな疑問が浮かんだら気になって気になって仕方がなくなってしまったんだ。

「んん〜セルティのカニタマ最っ高!超おいしい!いや〜、もういつ先生の嫁にいっても大丈夫な感じだね!ってもう嫁か!」
『おだててもデザートのプリンくらいしか出てこないぞ』
「プリンっ!」

真宵は新羅のことを先生と呼ぶ。何でも静雄の喧嘩に巻き込まれ怪我をしたとき、治療をしてくれたのが新羅だったらしい。(そして静雄と初めて会ったのもこの日だったという。初対面で怪我をさせられるなんて、なかなか無い経験だと真宵は他人事のように面白がっていた。その時私はこの子ちょっと変わってるなと思ったが間違いではないだろう)

『プリンは焼きプリンにしてみたんだ。初めて作ったから、味の具合を教えてくれ』
「おっけーおっけー!任せて!」

満面の笑顔で美味しい美味しいと言いながら食べられると、作り手冥利に尽きるというものだ。真宵は本当に美味しそうに食事をするから、なんだか作り甲斐もある。真宵は大食いではあるが、早食いでは無い。一回一回ゆっくり咀嚼して嚥下する姿は彼女の育ちの良さを窺い知ることができる。


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