歪愛

□飴のように、甘くとろける
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「ん?ああ、気にすんな。お前に祝いの言葉もらっただけで十分だよ」
「いえいえ、せっかくですから。それに私、いつも静雄さんに貰ってばかりですしね。…あった」

じゃん、と取りだした飴に、真宵はふと良いことを思いついた。せっかくメイド服を着ているのだ。らしくはないが、たまにはこんなサプライズがあってもいいだろう。

すっ、と静雄の手を取り(この時少し静雄はギクリと体を強張らせたが、気にしたら負けだ)、真宵は少しだけ首を傾けてそして口を開いた。

「…ご主人さま、明日もお仕事頑張ってくださいね。この飴ちゃんをなめて、応援している真宵を思い出してくれると嬉しいです」

できるだけ甘い声を出し、きゅっ、と握った静雄の手に飴を乗せて静雄を見れば――…、顔を真っ赤にさせていた。

「…え?あの、ちょっ、静雄さん?す、すみませんちょっと調子に乗りすぎちゃっ」

もしや不快にさせてしまっただろうか、という不安がよぎり謝ろうとしたが、静雄が真宵の顔面をその大きな掌で押さえつけたために言葉を紡ぎきることができなかった。

「お、おおおお前なっ!あんまりこういうこと他の男にするなよっ!?」
「ふぁい!?」
「静雄落ち着いてとりあえず手を離してやれ!?なっ!? 真宵ちゃん死ぬからっ!」

静雄の心情はよく分かるトムであったが、しかし放っておくと真宵の顔が砕かれる可能性がある。慌てて制止に入ったトムに言われてやっと手を離した静雄だったが、「行きましょう、トムさん!」と言って、今度はずんずんと勝手に先に歩いて行ってしまった。

何が何やら、という表情の真宵にとりあえず一言「静雄、かなり嬉しがってるからな。あれでも」とフォローを入れて、トムは静雄の後を追いかけて行った。



次の日。真宵からもらった飴を片手に、顔を真っ赤にさせている静雄の姿をトムはしっかりと見てしまった。




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シズちゃん、お誕生日おめでとう!

2014/01/28

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