歪愛

□飴のように、甘くとろける
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「え、は、真宵?」
「真宵ちゃん!?お団子頭の!?」
「待って下さい。マジでお団子頭でしか認識されてない感じですか?」

本気で驚いているらしい2人を見て、さすがの真宵も少しだけ落ち込む。確かに髪型が変われば違って見えるかもしれないが、そこまで分からなくなるほど浅い付き合いではないだろうに。そんな真宵の心情を察したのか、トムと静雄は慌てて弁解を始めた。

「あっ、いや、ほら、普段と全然雰囲気違ったから驚いちゃってさ。というか真宵ちゃんがメイド喫茶で働いてるなんて全然知らなかったし!」
「お、俺は知ってたけどよ、お前フロア担当じゃなかったろ?だから全然そのつもりで見て無かったっていうか…!」

あまりに必死な様子だったため、真宵は先程の寂しさなど忘れて思わず笑ってしまった。もう気にしていないだろうその様子に、トムも静雄もホッと胸を撫で下ろすのであった。

「ところでお2人がこの時間にここを通るなんて珍しいですね。まだお仕事ですか?」

それならば、引きとめたりして悪いことをしてしまったな…と思う。しかしそれはどうやら違ったようで。

「いんや、違う違う。今日はこれからサイモンのとこ行くんだよ。今日は静雄の誕生日だから、奢ってやろうと…」
「えっ、静雄さん誕生日なんですか?おめでとうございます!」

今日が静雄の誕生日などと全く知らなかった真宵は、驚きながらもすぐ静雄に祝いの言葉を述べた。が、なぜか静雄は「お、おう…?」と、変に驚いている。

「…お前が寿司に反応するより先に、俺を祝ってくれるなんて思わなかった」
「そこまでろくでなしじゃないですよ!?」

ね、トムさん!と話を振れば、「えっ!?そ、そーだな」と、これまた微妙な反応が帰って来た。どうやらトムも静雄と同じことを思っていたらしい。

「私、一応常識の方はちゃんと兼ね備えているんですからね…!っと、そうだ、それよりちょっと待って下さい静雄さん。確かここら辺に飴ちゃんが…。大したものでは無いですが、よければ」

ごそごそとワンピースのポケットを探る真宵。確か口寂しくなったとき用に、飴を数個忍ばせておいたのを思い出したのだ。


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