ニートと警察官

□Jim Beam Rye-yellow label-
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家に帰ったら、駒鳥が1人で出来上がっていた。

「あっ、降谷くんお帰り〜〜〜」
「.........どういう状況ですか、これ」

顔を赤くして目元をとろりと溶かせていた駒鳥とともに、降谷の目に入ってきたのは十数本の酒のボトルであった。肌寒くなり、家に帰ったらホットウイスキーでも飲んで眠ろうかと考えていた降谷だが...まさかこのような形で酒に迎え入れられるとは想像だにしなかった。駒鳥の近くにたくさん転がっているそれは、よくよく見ると、ワインにウイスキー、ブランデーと種類は様々である。しかもどれも蓋は空いており、少しだけ量が減っていたものであるから思わず頭を抱えてしまった。

「...駒鳥さん...舐めるほどの量だとしても、ちゃんぽんはよく無いですよ」
「今日はお酒の気分だったの!」
「だからって、何もこんなに買わなくっても...」

駒鳥の足元で倒れてしまっているワインボトルを机の上に置き、降谷はため息をついた。駒鳥はいつも突然予想もしない行動に出る。しかもその行動の大半は、ただの思いつきだ。今回の酒とて、駒鳥はたいしてアルコールを好んでいるわけでも、ましてや酒に強くなども無い。何本も買ったところで結局降谷が飲むことになるのは目に見えていた。

「ふふ、見て。降谷くんのお酒も買っちゃった」

上機嫌な声色に片付ける手を止め美しい情報屋の方を向いてみれば、彼女はバーボンウイスキー...ワイルドターキーのボトルにキスをしていた。その行動にカチン、と降谷は思わず固まってしまう。組織の一員として『 バーボン』と呼ばれ続けて長いためか、バーボンウイスキーに対して妙な愛着はあった。そのウイスキーのボトルに、好意を寄せている女性が唇を寄せているのを見れば...それは邪な気持ちになってしまうのも仕方が無いというものである。降谷は動揺がばれないように駒鳥の手からボトルを抜き取れば、駒鳥は、「あー降谷くんがー」と悲しげに眉を八の字にさせた。

「なにが僕ですって?」
「ぶう...」

手を伸ばすが、返してくれないと分かったのか。駒鳥は口を尖らせコップに入れていた酒を一気に煽った。

「駒鳥さん...あなた下戸なんだからそんな飲み方...」
「意地悪言う降谷くんには、1口もお酒あげなーい!」

駒鳥は口を尖らせたまま、さらにコップにウイスキーを注ごうとする。そろそろ止めないとまずいなと判断した降谷は、溜息を吐きつつ駒鳥が注ごうとするウイスキーボトルを見て...思わず彼女の手首を掴んでいた。

「...降谷くん...?」
「...駒鳥さん...もういいでしょう...っ?」
「んー...」
「.........」
「.....痛いよ、降谷くん」
「!...すみません...」

少しだけ眉根を寄せた駒鳥の表情に、降谷は慌ててその手首を離した。降谷とウイスキーボトルと交互に見て、そうして駒鳥は仕方ないなあと苦笑した。降谷も疲れているのだ。ここは大人しく言うことを聞こう。駒鳥は暗い顔をする降谷を横目に、散乱したボトルを手に取り片付けるためキッチンへと向かった。

「...嫌われてるねぇ、シルバーブレット」

駒鳥は困ったように微笑みながら、先程飲もうとしたウイスキーボトルにそう呟いた。









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2017/04/17


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