ニートと警察官
□妖精さんのお出迎え
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(※スコッチの言動性格捏造。公式で色々と明らかになったら修正入れます)
『 スコッチ、君のいるすぐ近くに俺の知り合いがいる。情報屋駒鳥、聞いたことあるだろう?本人は不在だが、弟子の女性がいる。彼女にはもう伝えてあるから、すぐに部屋に入ってもらっても構わないとのことだ。俺もすぐ向かうから、場所はー...』
黒の組織での任務中、スコッチはちょっとしたドジをやらかして腕を怪我してしまった。大量に流れる血液はあまりに目立ち、かといって応急処置ができるものも持ち合わせていない。そんな時に、バーボンが信用できる知り合いの塒を紹介してくれたのだ。情報屋駒鳥。スコッチも聞いた事はあった。一見お断りの情報屋で、その情報の質と量はトップクラスであると。ハッキング専門の情報屋の中で、駒鳥以上の情報屋はいないと言われているくらいだ。
「...バーボンはああ言っていたが、本当にいいのだろうか」
そして件の情報屋の部屋の目の前。スコッチは少しだけ躊躇していた。本当に匿って貰ってもいいのだろうか、と。しかし腕から血を流している男が玄関先にいる方が迷惑かと思い直し、呼び鈴を鳴らした後玄関を開けたのである。
「すみません、こんにちはー...、ん?」
玄関の扉を開けて、すぐ目の前に紙が置いてあった。スコッチはそれを手に取り、声に出して読み上げる。
「『 中にお入りください』?」
何かのメモ用紙に綺麗な文字が並んでいた。玄関先で辺りを見回してみるも、特に誰もいない。首を傾げつつ、スコッチは「お邪魔しまーす...」と声をかけ部屋へと入った。普通の1LDKのその部屋に、人の気配がない。
「ん?」
すると机の上に、また紙が。
「『 お使い下さい』......これか」
紙の近くには、濡れタオルと救急箱が置いてあった。これは有難い、とスコッチは上着を脱いで怪我をしたところを濡れタオルで抑え拭いていく。ピリリと痛むが、これくらいの傷であれば三日あれば傷みなど無くなるであろう。ガーゼを当てて応急処置が完了すると、今度は台所の方で何か物音がした。もしや先程からもてなしてくれている、例の弟子の女性かもしれない。挨拶をしなくては、と立ち上がり台所へと向かうと...
「...なんだか妖精にでももてなされてる感じだなあ」
台所の近くにある簡易テーブルの上に、マグカップに入ったコーヒーとお煎餅が置いてあった。その横にはまた紙が。
「『 ごゆっくりどうぞ』...か。有難いけど直接お礼を言いたいんだけどな」
どこかに隠れているであろう優しい妖精を思い浮かべながら、コーヒーを一口飲んだ。恐らくインスタンドであるそれは、豆を挽きたてのコーヒーよりもずっと美味しく感じるのは気のせいではないだろう。少しだけほかほかとした暖かい気分になった所で、部屋のインターホンが鳴った。
「スコッチ、無事か?」
間を置かず扉を開けてきたのは、金髪褐色の美青年。バーボンだ。スコッチはニコリと笑い、マグカップを持っていない方の手でゆるりと手を振った。
「ああ、親切な妖精がもてなしてくれたからな」
「妖精?というか、そのコーヒー...」
不思議そうに首をかしげるバーボンに、スコッチは今まであったことを話した。彼もやや疑ってはいたが、一緒に置いてあったメモ用紙を見せれば、「雀さんがコーヒーを...いやそんなまさか...」と言いながらも信じてくれたのである。
「妖精は雀というのかい?可愛いな。で、ここにいる子にお礼が言いたいんだけど、どこかに隠れているのか姿が見えなくて。君なら分かるんじゃないか?」
「そうだな、恐らくだが...」
バーボンは、すぐ左手にある扉を開けて部屋へと入った。部屋には大きなデスクトップが1台と、敷布団が隅に畳んで置かれている。
「バーボン?」
「定位置なんだ。ねえ、雀さん」
そう言うやいなや、バーボンは押入の襖を開けた。押入の下段に収まっていたのは、ノートパソコンを抱えた黒髪の美女だったのである。
「.........」
「ほら、スコッチ。言いたいことがあったんだろう?」
「あ、ああ」
可愛らしい妖精を想像していたため、予想に反して美しい女性が出てきて少し動揺してしまったらしい。スコッチは1度咳払いをして改めて妖精、否、雀を見た。化粧っ気はないが、もともと目鼻立ちがはっきりしているのだろう。ぱっちりとした瞳に長い睫毛、スッと通った鼻筋に、赤くぽってりとした唇。ぱちり、と雀とスコッチの目が合った瞬間に、雀はぱっとバーボンの後ろに隠れてしまった。
「あれ、嫌われたかな...」
「いや、雀さんは人見知りだからな。スコッチに見つめられて緊張したんじゃないか?ところで雀さん、あなたコーヒーなんて淹れることができたんですね。驚きました」
「...駒鳥が、降谷くんによく出してるから」
「...そうですか」
噛み締めるように、雀の答えに返答したバーボン。ここでスコッチはぴんと気づくものがあった。おそらく彼は、この女性のことを憎からず想っているのだろう。殺伐とした場にいることが多い分、同僚の小さく暖かい感情に自然と笑みが浮かんだ。
「...雀さん」
「...なあに、スコッチくん」
「コーヒーとお菓子と、救急箱もありがとう。それと、バーボンのこともよろしく頼みます。熱くなりやすい男だけど、決して悪い奴じゃないですから」
「お、おいスコッチ...!それはどういう...」
「?うん、分かった」
慌てるバーボンを横目に、スコッチは目の前できょとんとしている女性に微笑むのであった。
妖精さんのお出迎え
2016/09/05