歪愛

□ウソツキな人
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「さあっ、真宵ちゃん若菜ちゃん!遠慮しないで食べて食べて!」
「すみません、狩沢さん。ごちそうになります」
「いっただっきまーす!」

日曜日。先日狩沢と約束していた撮影会を終えて、今は夕食を取るため露西亜寿司にいた。今この場にいるのは狩沢、遊馬崎、渡草、門田、真宵、若菜の6人だった。渡草と門田は撮影会を終えた後にばったり会い、流れで一緒に食事を取ることになったのである。露西亜寿司の店主であるデニスも真宵の大食いっぷりを知っているため、最初から彼女専用に、彼女に見合った量の寿司を目の前に出してくれていた。

「いやあ、相変わらずいい食べっぷりだねえ。真宵ちゃんのお腹ってブラックホールなの?」
「よく分かんないですけど、昔から大食いではありましたよ」
「若菜ちゃんは真宵ちゃんと小学校からの仲だったよね?実際どうだったの?」

話を振られた若菜は、少し苦笑をして真宵の方を見た。大食いではあるが、特別早食いであるわけではない真宵は、三貫目のサーモンを口にしているところだった。

「…そう、ですね。真宵ちゃんは早ベンの常習犯で、学校にもお弁当を2つ持ってきてましたよ」
「あはは懐かしいねぇ!今じゃ早ベンやったって怒られないからねぇ!」

何で笑っていられんだ…、と若干引き気味の渡草と門田に真宵はにししと笑う。それが彼女にとっての日常で、早ベンをして怒られていたことも今では良い思い出なのだ。そうやって皆が笑い合っている中、遊馬崎だけは見ていた。何かに耐えるように、唇を噛んでいる若菜の姿を――…。


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