歪愛

□指の先には宝物
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春。それは出会いと別れの季節。真宵は池袋駅にて、たくさんの高校生を横目に帰路についていた。池袋に遊びに来る学生は少なくなく、駅には様々な制服の高校生、はたまた中学生が和気あいあいと歩いている。その中でも多く見られるのが、来良学園の生徒たちだ。来良学園は、池袋に在る共学の私立高校。偏差値は中の上で、都内有数の施設を誇るだけあってかなり大きい高校だ。

「高校生は元気でいいね〜」

そう言って真宵は、手元に持っていたクレープをペロリと食べた。そして今度は片手に持っていたビニール袋に手を突っ込み、取りだしたのはー…たこ焼き。まだ温かいそれに満足そうに頷き、ぽいぽいっと口に入れる。

「さすが全国有名チェーン店のたこ焼き屋だけあるよねぇ。たこでけぇし」

そういえば自分の高校時代はどんな感じであったろうか。2年前に高校を卒業した自分にとって、高校時代とは忘却の彼方である。それでも、現在と同じように買い食いをしていたことはしっかりと覚えている。

「…ん?つまり高校生の時から成長してないってこと?」

笑えない事実に一瞬固まるも、でもまあ食べ物に罪は無い!と、意味の分からない自己完結をして、残りのたこ焼きを口に入れた。このように食い意地を張った真宵であるが、彼女の出身高校を聞けば大抵の人は目を剥きひっくり返ることだろう。

彼女の出身高校は、聖エリザベス女学院高等部。関東屈指のお嬢様学校である。とはいえ彼女が良い所の令嬢であるわけではなく。小学校時代の親友がこの学校の中等部を受験すると言い、真宵もそれに乗っかり見事中等部に受かったのだ。そしてそのまま進学し、高等部を卒業したのである。偏差値もかなり高い学校であるが、親友と同じ学校に行きたいがために猛勉強をした結果だ。もはや執念である。

そして現在。真宵は新宿にある3年制の専門学校に通っている。ヘアメイクアーティストになるのが彼女の夢であり、そのために日々努力を重ねているという訳だ。


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