南国パプワ夢
□夏のお守り(〜春夏秋冬〜)
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「冷たっ」
「…!!す、すみません!!大丈夫ですか?」
「大丈夫どす、あんさんこそ濡れてしまいましてからに」
あの人の初めての声を聞いてドキンと胸が熱くなった。
少し濡れてしまった髪から覗く吸い込まれそうな整った顔立ちに見とれ、
私は話す声が震えてしまった。
ずっと憧れてた
ずっとお話したかった
今はこんなにも近くにいるから…
名前が知りたくて、私は勇気を出して訪ねた。
「あ、…あの、すみません…あなたのお名前は?」
「わてどすか?わては、アラシヤマ言います。良かったらこれ使ってや」
アラシヤマは名無しさんにハンカチを渡すとその場から歩いて言ってしまった。
(……アラシヤマさん…京都弁だったし関西の方なんだ//)
それから私はハンカチをいつか返せればと勤務中にもずっと持っていた。
しかし彼はそれから一度もお店の前を通る事はなかった。