17号夢短編
□涙のバレンタイン(前編)
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「今忙しいんだ、悪いな」
「でも貰うだけでも…ねっお願い!!」
「俺はコイツから貰ったチョコがあるからいいんだ」
「貰ったチョコって……その落ちた奴じゃないですよね?」
「そうだ」
その途端に名無しさんに向かって一斉に非難の声がいっぱいだった。
「この子落ちたやつを17号さんに食べさせる訳じゃないわよね?」
「それだったら、サイテーだよね」
「信じらんない」
名無しさんは落ちたチョコの前で膝をつき、涙を流していた。
一生懸命作った物が渡せず、俺への気持ちが伝わらないと思ったんだろう…
大丈夫…名無しさん…俺にはしっかり届いてるから。
「止めろ!!俺はコイツからのチョコしか貰わない。名無しさん、行くぞ」
17号は落ちたケーキを広い名無しさんの身体をひょいと持ち上げると、お姫様抱っこし、二人がいつも通っている学校の方向に飛んでいった。
屋上は町や自然が見渡せるから眺めがよくて、何より空が綺麗だから好きだって言ってた17号お気に入りの特等席。
「…ぐす…ごめんね、17号チョコも落としちゃったし…女の子からも庇ってくれて…」
「気にするな」
涙で濡れた目をこすりながら、名無しさんは無理矢理笑顔を作っていた。
17号は後ろから名無しさんを包み込むように座ると両手で名無しさんの手を握りしめた。
「あっ…あのっ…17号?」
突然の17号に名無しさんは鼓動を早くするばかりだった。
「ふふっ、耳まで赤くして可愛いヤツ」
17号は名無しさんの顔に手を添えると、マルの目からこぼれた涙を舌でペロって舐めた。
「ん…」
「ふふ、しょっぱいな」
「涙はしょっぱいもん!」
「俺の為に流してくれた涙だもんな、甘いんじゃなくて、しょっぱいバレンタインだな!」
「むぅ……でも17号に食べて貰いたかった…何度も作ってやっと成功したんだ!
本当にごめんね…
私慌てん坊でおっちょこちょいで、落ち着きなくて、
それから…17号に迷惑ばかりかけてて……こんな私からのチョコなんて嬉しくないよね……
」
「…少し大人しくしてろ」
「…」
突然近づいてくる17号に名無しさんはとっさに目を閉じた。