17号夢短編
□瞳を閉じて〜前編
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どうした事か俺は身に着けていたスカ―フを女目掛けて上から投げた。突然空から舞って来たスカ―フ。女は不思議そうに手に取り辺りを見回す。
女は俺に気づくと笑顔で頭を下げた。
一瞬目を離して視線をまた女の方にやると今度は姿が無い。どこへ消えたのか。
女は直接俺に礼が言いたかったのかわざわざ工事中のビルの鉄骨の中を足場を探しながら一歩ずつ俺に近付いて来た。
「……?」
近付いて来た女は俺と目を合せるが何も言わない。
俺が人造人間17号だと気付いているのか…
「………なんだ?俺が怖いのか?明日この町は全て破壊されるんだ。…………お前もな。そんなに走って急がなくても明日死ぬんだ。思い残す事の無いようにな。でもそれはちゃんと返してくれよ?」
女は意味がよくわからないのか俺の言葉にボ―ゼンとしている。
女は一生懸命何かを伝えようと手で仕草を始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
もしかして……
「お前、耳が……」
そう言いながら耳を指す仕草をすると女は首をたてに振った。
聞こえない…………
耳が聞こえないとはどんな風なのだろうか。
俺には耳が聞こえない気持ちなんて分かるはずが無かった。
だって俺は現に今耳が聞こえている。
聞こえなくなった事も無い……
そういう人間が居るなんて考えた事も無かった。
女はただ俺の顔を見て微笑んでいる。何も知らないように、俺達に明日何もかも壊されるのを知らずに………
女は鞄の中から小さなメモ帖を取り出しボールペンで何やら文字を書き出した