嗚呼、

□彼はどちらですか?
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次の日、教室で会った月子ちゃんには「ごめんね」と一言。月子ちゃんは気にしないで、と笑ってくれたけど、その瞳は悲しそうだった。何かあったのかな。でも、あたしにそれを聞く権利はない。

昼休み、梓くんにも会った。「宙先輩、昨日はすいませんでした。」と珍しく真面目に謝った梓くんに驚きつつも、ううん、と首を横にふれば、じゃあ一緒にお昼食べましょうよ!と手をひかれた。

その時、金久保先輩と目があった。先輩は辛そうな目をしてた。目線はあたしじゃなくて、梓くんが掴んでいるあたしの手みたいだった。まさかね、たまたま視線が被っただけ。そうわかっていても期待してしまう胸を無理矢理でも期待しないように叩いた。



嗚呼、

彼はどちらですか?




「宙先輩?何やってるんですか。」

ぷっと可愛く噴き出した梓くんは呆れながらも楽しそうに笑った。そ、そりゃ突然胸叩いてたら新種のゴリラになりたいのかと思われるよね、うん、確かに可笑しい。ご、ごめん。と言えば先輩顔赤ーい。とからかう後輩。全く、調子にのった天才くんだね。


梓くんと射手座定食頼んでを食べればお腹いっぱいで眠くなった。まだ午後あるのに…。でも昼休みもまだある。未だ食べていた梓くんが「僕の膝、貸しますよ。」と言ってくれたので遠慮なく膝を借りた。ああ、ここがすっごい隅っこでよかった。と思いながらそのまま睡魔に襲われ、あたしはあっけなく瞼を閉じた。




―――梓side―――



##NAME2##先輩が無防備にも僕の膝で寝はじめた。ああ、可愛い。この人本当に可愛いよ。金久保先輩には勿体ないくらいね。今まで悔しそうに目を細くさせていた普段は温和な先輩が生徒会長に待ったをかけて僕のところまで来た。

「何か用ですか?」

「…約束は、守ってくれるよね。」

「約束?ええ、ちゃんと。今だって…ほら。」

そう見せつけるようにテーブルと体を離す。そこにはすやすやと気持ちよさそうに眠る宙先輩がいる。金久保先輩はまた悔しそうな顔をする。うん、いい気味。

「監禁…してないでしょ?」

「…っ…」

宙先輩と金久保先輩が両想いだと知ったとき、凄く焦った。凄く焦って、焦って、悩んで、僕なりに導き出した答えが「ふらないと監禁する」という考え。もちろん、監禁出来るはずない。と怒った金久保先輩も、学年は違う、授業だってある、いつでも貴方が見られるわけじゃない。と手錠を出せば大人しく黙った。そして、僕の計画通り、宙先輩は金久保先輩にあっけなくふられた。

約束は約束。守るときは守る。だから監禁はしてないけど、今度こそ別の人を好きになったらしちゃうかも。なんておちゃめいたことを口にすれば、金久保先輩が本気で怒りそうなのでやめる。こういう類の人は本気で怒らせるとめんどうだからね。

「じゃあ、邪魔者には消えて頂きましょうか?」





(貴方がふったんでしょう、その手で)

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