novel
□秋日和
2ページ/3ページ
何だか温かい。
体もこの部屋も。
そう感じてゆっくり体を起こすと、夕日が部屋を照らしていた。
ちょっとだけ、なんて言って、二人で毛布に飛び込んで。
そのうちに寝てしまったのだ。
隣で眠る彼女も夕日に照らされている。
「すごく綺麗です…」
「んー…」
「わ…!え…っと」
「え…?」
「…あ、れ?」
「…ちょっと嫌だ、今何時よ?」
慌てふためいている俺を不思議そうに見上げてきたが、聞こえてはいなかったようだ。
「完璧に寝ちゃってたわね…」
「ええ、僕もさっき起きました」
「気持ち良過ぎるのよ」
「佐藤さん…?」
「…高木毛布があったから、尚更ね」
再び横になり、俺を引き寄せたかと思うとそんなことを言うものだから、心臓が大きく音を立て始めてしまった。
「…そ、そうです…」
「何よ、そんな返事されたら恥ずかしいじゃない…」
「いや、その…」
「その、何…?」
「ドキドキしちゃいました」
「…いきなり真顔で言わないでよ…。大体、高木君の方なんだから。毛布宣言をしたのは…」
照れて文句を言いつつも、俺の袖を掴んでいる彼女が可愛いくて堪らない。
「暖かいわね」
「ええ、部屋中。」
「この太陽が毛布を温めていたのよね」
「今は夕日になりましたね」
夏の燃える様な太陽も良いが、優しく包んでくれる様な秋の太陽も良い。
「そんな太陽みたいになります」
「え?」
そんな太陽みたいな毛布に。
俺が包むのは、大切な貴女ですから。