novel
□一位の意味
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どれくらい経っただろうか。ずっと彼女を腕に抱いていた。
「僕って何位ですかね?」
「ランキング圏外」
「圏外、ですか…」
「格好良いから」
しょぼん、と肩を落とす高木に顔を背けたまま、佐藤はつぶやいた。
「え…」
「何でもない」
そう言うと、腕の中から出ようとする彼女を逃がさないように抱き締める。
「ちょっと…」
「佐藤さんを貰ったので放せません」
照れて離れたがっていた彼女だったが、諦めて身を寄せてきた。
「…高木君は別枠」
「と、言いますと…?」
「高木君は“イケメン”じゃなくて、“格好良い”の」
「お…同じですよね?」
「違うの」
彼女にとってその二つの言葉には、自分なりの区別があるようで。
「だから、格好良い人ランキングなら一位ね」
「それって、佐藤さんにとっても一位ってことですか?」
「どう思うの?」
「だったら嬉しいです」
「逆に、私は高木君の一位なの…?」
「もちろんです」
「…同じよ」
高木の言葉に微笑むと、こちらを向き、背中に腕を回しながら返事をする。
「佐藤さんのランキング一位なら幸せです。…ていうか、佐藤さんだけの俺ですから」
こちらを見上げていた佐藤の目をじっと見つめそう言うと、顔を赤らめて俯いてしまう。そんな彼女を優しく抱き締める。
「うん。私も、高木君だけの私」
「はい」
貴女の一位なら、他のランキングで最下位だろうと構わない。そもそも上位になりたい願望があるわけでもないが。
「私も自主的にもらうから…」
「何をですか?」
「もう、分かるでしょ…」
「すいません、分かりません」
「馬鹿っ…目の前にいる私の一位よ!」
分かってるくせに、と意地になりながら抱き付いてくる佐藤に、嬉し過ぎてにやけてしまう。
「私達にとっての一位は、他に誰かがいるわけじゃなくて…」
「あなた“だけ”ってことですよね」
二人で微笑み、どちらからでもなく、キスをする。
お互いの一位を確認し合うように。