novel

□暑い日だから
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ベッドに倒れ込む一人の男。その部屋のエアコンと言えば、故障していて使い物にならない。



「暑いー…」

「もう、だらしないわね…」

「佐藤さんだってだらしないじゃないですか」

「私の何処が…」


「だらしないと言うより、セクシー…ですね」



むくっと起き上がり、タンクトップを着ている彼女の肩から落ちていた下着の肩紐を軽く摘む。


「…もう、こんなことばっかり気付くんだから」

「僕も男ですから」

「……」


「…そそられます」

「ばっ…!」


その紐を下げようとした高木だったが、次の瞬間にはベッドでバウンドしていた。



「何するんですか…」

「こっちの台詞よ!」


彼女に突き飛ばされた高木は尚も寄ってくる。



「暑くてそれどころじゃないわよ」

「暑い時には熱い物をって言うでしょう?」

「それは食べ物の話」


「男が食べると言ったら、そういった意味もあるんですけどね…」


「どういう意味?」

「え?」

「だから、食べ物以外に何を食べるのよ?」

「あ、あの…」

「何?」



そうだ、彼女は鈍感なのだ。こういう事においては異常な程に。



「高木君?」

「えっと…ですから…」

「…っ!」


「こういう事です」

「……ちょっ…」

「大丈夫ですよ、食べたりしませんから」

「当たり前でしょ!」



顔を真っ赤にして怒鳴る彼女の上で、一向に動く気配の無い高木は楽しそうにしている。




「この位置から佐藤さんが見られるのは自分だけ、って考えると…燃えますね」


「勝手に燃えてなさい」


「独占し過ぎて燃え尽きそうです」


「…こんなこと許してるのは高木君だけなんだから…当前じゃない」



「やば…」

「…今度はどうしたのよ」


「僕だけ、ですか」

「そうよ。疑ってるの?」

「いえ、そうじゃなくて」



「そのワード、十分興奮出来ます」


「…高木君」


「とにかく、そういう意味ですよ。」



軽く口付けると、彼女から離れようと身を起こそうとしたが、Tシャツが引っ張られそれは阻止された。



「そこまでして、置き去りにするわけ?」

「…待ってました」



高木は得意気に微笑むと、横たわる彼女の背中に腕を回した。
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