novel

□秋日和
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「んー、暖かい」

「でしょう?」


「太陽の匂いがするわ」

そう言い愛おしそうに毛布に顔を埋める彼女。

こんな顔を見られるなら、毎日でも干したいくらいだ。



「気持ち良くて寝ちゃいそう…」

「え、マジっすか?」

「だってフカフカなんだもの」


空気も冷たくなってきて、秋を感じさせる陽気。これからどんどん布団が恋しくなる季節になってくる。




「僕も太陽の匂いがしたら、そうやってくっついてくれますか?」

「うーん…。毛布は特別」

毛布を抱き締め意地悪な笑顔を見せてくる。


「嫉妬しちゃったかもしれません」

「え?」

「毛布に嫉妬しました」

「何それ…」

そっぽを向き、高木はベッドから少し離れる。



「高木君?」

「何すかー…」

「もう…。」



「冗談で…」

「そっぽ向かれたらつまらないじゃない」

振り向こうとした時、立ち上がった彼女に後ろから抱き締められた。



「毛布に勝てました、僕」

「高木君が可哀想だから」

離れそうになった彼女の両手を掴んだ。


「離されたらまた可哀想になります」

「自分で言ってどうするのよ」

「お願いします」


仕方ないわね、なんて言いながらしっかりと抱き締めてくれる彼女に笑みがこぼれる。



「太陽の匂いはしないけど、このままでいてあげる」


「僕が毛布になります」


「…こっちの毛布も特別だわ」

振り向き真っ正面から彼女を抱き締めると、そう言い微笑んでくれた。



「あの毛布が包むのは僕で十分です」

「じゃあ…その高木毛布が包むのは…?」

「…今、もう。」

「…」

「あ、あれ…えっと、佐藤さんです…」

「伝わってるわよ」

暫く高木の胸に顔を預けていた彼女が上を向き、恥ずかしそうに笑ってきた。


「良かったです」


少しの沈黙の後、自然と唇が重なった。
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