novel

□春に包まれて
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「桜…綺麗ね…」

「本当ですね」


二人を乗せた車がその並木通りに差し掛かったとき、光のような鮮やかな色が一面に広がった。
思いがけない出会いに心が動く。


「少し歩きませんか?」
せっかくだし、と高木は微笑む。
佐藤も笑顔で頷いた。


「こんなにすごい所があったなんてね」

「確かここ、テレビの花見スポットの特集で映ってた場所かも…」

「そうなの?」

「ええ、あそこに小学校があるでしょう?ちょうどその向かい側に…あ、ほら団子屋が。やっぱりここですよ!」

嬉しそうに話す高木の姿に、佐藤は頬が緩んでしまう。

「やったわね、高木君」

「…て、笑ってません?」

「だって、あまりに嬉しそうだから」

「いやぁ、まさかここだったとは…。花見に行けるとは思ってなくて、場所まで見てなかったんですよ。」

「そうね、最近忙しいし、非番だからってなかなか遠出も出来ないものね。」


今日は久々に二人揃っての非番。ドライブも兼ねて、食事に向かう途中だったのだ。


「今日はラッキーね」

「はい、かなり。一石二鳥です」

「ねぇ、向こうまで行かない?」


ずっと先まで咲いている桜は太陽の光に照らされ、眩しいほどに感じる。
囲むように並ぶそれは、
行き交う人々を包み込んでいるようだ。



「佐藤さん、見て下さい」

高木が見つめる先には、真新しいランドセルを背負った子供たち。さっき彼が言っていた小学校の校庭。

父親に手を引かれている子、母親と並んで写真を撮っている子。随分昔に経験した光景がそこにはあった。


「入学式…そういえば、そんな季節よね」

「4月って毎年緊張したなぁ。新しいことだらけで」

「確かに、やたらとドキドキしてたかも。でも、楽しみでもあったわね。」

「ええ、新しい出会いの季節ですからね」
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