もぐもぐ

□守りたいのに、零れ落ちる
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「八田ちゃん!」



八田さんはあれから
まともに食事をとらないでいたら
病気にかかってしまったらしい。


なんの病気かは教えてくれなかった。


「八田ちゃん、また行くん?」
「あたりまえっす、俺休んでらんないっすよ」
「でも病気あるやろ」
「....そんなん、気合いで治ります。じゃ」
「ちょ、八田ちゃん!...鎌本、頼むわ」
「うっす」


草薙さんに頼まれたら断れない。


スケボーに乗られると
どこいくかわかんねえんだよな....



とりあえず無色の王の出没スポットを片っ端から探る。


あ、


「八田さ...猿」
「かま、もと...」


何故いつもこいつは八田さんの周りを
うろちょろするのか。


「三下ぁ...美咲が本調子じゃねえ。どういう事だ」
「お前がいるからじゃねぇの?ほら、帰りますよ」
「てめえ調子乗ってんじゃねえぞ」
「うるせえな...八田さん、どうします?」
「こいつぶっ殺....かはっ...げほ...げほっ....!」
「八田さん!」



血が出た。出てる。
苦しそうな八田さんの顔。



「みさ、き?」



さすがに猿も驚いたみたいで
戸惑っている。



「...ちっ....猿、今日は.....」
「美咲、血が、出てる」
「お、おう」
「どうしよう、どうしよう、美咲死んじゃう....!」


そういえばこいつは。
変なところで子供のままなんだっけ。



「馬鹿、死なねえよ」
「でも、血、血が」
「....大丈夫だっつの、ほら」


自分の胸に猿の手をあてさせる。


しんぞうのおと。


「な?大丈夫だ」
「そ、う」
「鎌本!」

急に呼ばれて体がびくりと跳ねる。

「なんすか」
「帰る。草薙さんに言っとけ」
「あ、家まで送りますよ!」


横目で見た伏見の顔は間抜けな顔をして
ただ、ただ八田さんを見つめていた。


「八田さん」
「あー?」
「体、大事にしてくださいよ」
「あー」
「ちゃんと返事してくださいって!」


適当な返事しかしない八田さんに
怒鳴りながら腕をつかむ。

手が冷たかった。


「なんだよ」
「心配してるんすよ」
「....わりい」
「勘弁してくださいよ、ホント」



こんなんじゃ明日、明後日にはぽっくり逝っちまうんじゃねえか。 



「俺、大丈夫だって」
「駄目っすよ。明日は大人しくしててください」
「は?俺に命令すんっ─わ、あ!」


後ろから抱き寄せる。


「....年上の言うことです。聞いてください」
「てめっ子分のくせに!」
「少なくとも一年と1ヶ月は年上っす」
「......豚のくせに」


不覚にも可愛いなんて思ってしまった。


「鎌本のくせに」
「うるさいっす」
「...あったかい」
「あ?」
「お前、あったかいんだな」


冷たい小さな体。


「予定変更っす。BAR行きますよ」
「は!?」
「ちゃんとした飯、作って貰いましょう」
「.....今日だけな」
「いい子です」
「るっせ」




手のかかるガキ大将は今もまだ健在してて


子分の俺たちを振り回す


でも、俺たちはもう子供じゃないんで


ガキ大将と子分なんて関係は終わりにしましょうよ八田さん。




いや、美咲。







「お、お疲れさん」
「草薙さん飯!」
「いきなりやな...ちょい待ち。うまいもん作ったる」

手際よく料理をし始める草薙さん。


「鎌本」
「なんすか八田さん」
「猿、頭おかしいよな?」
「はい」


あれはおかしいだろ。


「あいつってよくわかんねえ」
「なにが」
「なんか、ほっといたら死にそうな気がする」
「ああ」


あんたらはよく似てるよ。
タイプは違くても考えが違くても本質は同じ。


「猿泣きそうだった....ざまーみろだな」


泣きそうなのはあんたじゃないすか。


「出来たで」
「ありがとうございます!」
「うまそー」


会話が途切れる。


なんとなく草薙さんを見たら
呆れたような顔をされた。


「脆いモンは大事にせんとな」





また、零れ落ちる。







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ついったで書きたくなって(笑)


猿→←美前提の鎌→美


この関係ヤバい



20121117

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