もぐもぐ

□捕まえた
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最近、なんか変だ。
鈍いって言われてる俺でも気付く。
あ?なにかって?
移動してるんだよ、部屋の中のものが。


「なんだよこれ...」


最初は空き巣かと思った。
でも餓鬼の俺には金目の物なんてないし、それっぽいものも盗まれていない。
それになくなった物は服とゴミ。

それが続いて三回目の今日。
やっと気付いたのは空き巣じゃなくて
ストーカーだと言うこと。最近やけに視線を感じるしなんだかつけられている気がする。

男のくせにストーカー被害とは。

相手が女の子ならいいが男じゃ洒落にならない。



「───ってことが最近毎日で...」
「それ、大丈夫なん?」
「八田さんそれ絶対ストーカーっすよ」
「や、やっぱり?」


草薙さんと鎌本に話したら
やっぱりストーカーらしい。


「ストーカー女....こわいっすねえ」
「でも八田ちゃんなら男でもあるんとちゃう?」
「あー....それは、ありそーっすね」
「ちょ、やめろよ!....気持ちわりい」


俺は男だっつの!


「でもないとは限りませんし」
「俺が家まで送ったる。鎌本に泊まってもらい」
「は!?いいっすよそんな!」
「なんで。危ないやろ」
「そっすよ、心配ですし」
「そ、んな女みたいなマネできるか!」
「ストーカーに男も女も関係ない、気いつけや」
「大丈夫っすよ、なにもしませんって!」
「わかってるっつの!」



なんだかんだ言いくるめられ
送られてきた。が、しかし




「八田ちゃん部屋汚いなー」
「掃除しに通いましょうか?」
「ちげーよ!あれだ、そのストーカー野郎!」


そんなに綺麗にしてる訳じゃないが
こんなに酷くない。


「あーあ、八田ちゃん郵便溜まってんで?」
「あ、すいませ....」


バサバサバサバサ


「なんすかこの写真...うわ...」
「八田ちゃんの着替え、戦闘中、HOMRAに居るとき....なんなんこれ」


血の気がが引いた。
気持ち悪い。


「な、んだよこれ...!」
「これ見るとずいぶん身近な人物っぽいなあ」
「でも身近過ぎちゃ撮れませんよこんなん」


なんでわざわざ俺に見せるんだ?
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。


「鎌本、どけ」
「は」
「燃やす」
「わー!八田ちゃん、ここ家の中や!ハウス!ハウス!」
「普通の火を使いましょう!ねっ?」



まあ、尊さんの火を使うのはな....




ピンポーン




タイミングよくインターホンが鳴る。


危ないらしいので草薙さんが出る。


「はーい」



「なんでした?」
「宅配便。はい、八田ちゃん」


手渡された小さな紙袋を開ける。








なんだこれ



「八田ちゃん?どうし、た....あ、そ」
「頭おかしいんじゃないすかそいつ」


袋に入っていたのは女物の下着。
しかもパンツだけ。


「いや、あの、....っ.....!」


異様な気持ち悪さと恐怖で涙が出る。


「八田ちゃん!?」
「なんで、俺がこんなっ....!」


経験したことのない恐怖に呑み込まれる。


「...八田さん、これ手紙みたいの入ってますよ」
「見なくていい。せやろ?八田ちゃん」


草薙さんが頭を撫でる。


「いや、大丈夫っす。見せろ」









愛しの八田美咲へ


今日は元気ない?
なにか嫌なことあった?
あったらいつでも言ってね
誰よりも傍にいるから。




鎌本がお泊まりするの?
ずるい、嫉妬しちゃうね。
浮気はしないでね。






「....燃やしましょう」
「八田ちゃん、今日は俺も泊まるわ」
「や、でも」
「心配なんよ」
「....はい」









今日は昨日より安心して眠れた。

右に鎌本で左に草薙さん。

川の字で少し照れたけど暖かかった。







「ん...」


夜中、目が覚めた。
時計を見ると午前3時。


リビングの電気がついているので
耳を凝らす。


「草薙さん.....が....で....」
「うるさ.....八田ちゃ...が....な...しょうがない.....」
「....でも.......そんな.......」



なんの話だ?


眠くてよくわからない



まさかあの二人のどちらかが犯人.....


共犯だったら?


怖い、信じたいのに....


睡魔に負け、そこで意識を手放した。



「八田さん、八田さん!」
「ん、あ...かまもと?」
「早く起きてください」
「わりいわりい」


夜中のことを思い出して体が固まる。


「....鎌本」
「はい?」
「リビングにいろ」
「はあ」


急いで身支度をしてリビングにいく。


「八田ちゃん、おはようさん」
「はよっす!じゃ」
「え!?」
「俺寝起きにランニングするのが日課なんすよ!」



逃げてしまった。


大事な人達から










「美咲?」


なんでお前は


「猿比古...」


俺の心を揺さぶるのか。





「で、どうした」

近くのファーストフード店で飯を食らう。


「俺、さ」
「なに」
「ストーカーにあってて」
「さすが美咲ちゃん....」
「真面目な話だ馬鹿、んで誰を信じていいのかなって....」
「そ。誰かに相談は?」
「草薙さんと鎌本に」
「で?」
「一緒にいたけど不安で」
「...あの二人は心配ないだろ」
「だよな!なんか疑心暗鬼?になっちまって」
「そりゃ誰でもなる」
「そっか!.....ありがとうな、猿」




なんかすごく落ち着いた。



「いえいえ、....不安だったら俺ん家来てもいいけど」
「へ?」
「嘘だ馬鹿」
「....行く」
「え?」?
「猿比古ん家行きたい」




寂しくないようにって
手を繋いでるけど恥ずかしいなこれ。

「着いたぞ」
「あ、マンションか」
「俺まだ18なんだけど」
「だよな、お邪魔します!」


先に靴を脱ぎ部屋に入る。


「はい進んでー」



ぱちん、と電気がつく。



「これ....!」




目の前にはポスターサイズの写真。





────全部、俺の顔。













「捕まえた」













俺は選択肢を間違えたのか。











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ストーカー伏見さんのきもちわるさを追究したらこうなった




報われない美咲ちゃん



監禁人生





20121115

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