もぐもぐ

□またそんなこと言って
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どちらかと言うと誕生日は嫌いだった。
産まれた日だからって一々パーティーやらプレゼントやら。
ただ、うざいだけだ。

なのに毎年のように祝ってくる連中は何なのだろうか。
嫌がらせか?まったく...

自分が産まれた意味を理解出来ない俺はこの日をいつも通りに過ごす。



仕事でいつものように街中を巡回していたときに見つけてしまった赤い鴉。


プレゼントはいらなかったんだけどな



無意識の内に腕を掴んで路地に連れていく。

「へ?えっな...猿!?」
「うるさい、黙れ」

有無を言わせず、ずるずると引き摺って路地裏で手を離す。
美咲は息を落ち着かせてから口を開く。

「何すんだよ!」
「美咲だ...」

そう、美咲だ。

「は?意味わかんねぇ」
「意味なんていらないだろ、美咲...」

そう言うと大きな目を開かせ固まる美咲。
そんなに開いたら乾燥すると思うんだけど。

「美咲、美咲、美咲、美咲」

美咲....
美咲にぴったりのきれいな名前。
まだ何も知らないきれいな美咲に。

名前を呼びながら存在を確認するように小さな身体を抱き締める。

「っ!なにすんだテメエ!」

その声と同時に脇腹に鋭い痛みが走る。


....蹴られたのか、美咲に


何故か嬉しくなって口元が緩む。

「な、に笑ってんだよ...気色悪いっ...!!」
「気色悪い?酷いな、美咲ぃ...」
「名前で呼ぶんじゃねぇっつってんだろ!」
「...美咲...今日は何の日だ」
「離せって!.......今日?」

途端に押し黙る美咲。
何で下向くの、顔が見えないだろ?
両頬を掴み無理矢理上げさせる。

「まさか、忘れた?」
「なに、が」
「誕生日」
「......んなの、知るか。離せ」


嘘。
忘れてない、そんな顔してる。


「嘘だろ」
「嘘じゃねぇ」
「へえ」
「.....なんだよ」
「じゃあなんで、殺しに来ないんだ?」
「....」

気まずそうに視線を泳がす美咲。
なんてわかりやすいのだろうか。
耳元でちいさく囁く。

「俺を殺せよ、美咲ぃ」

そう言って腕を離すが美咲は動かない。
顔を見てみれば怒っているような、でも泣きそうな顔をしている。

「美咲?」
「........猿」
「ん?」
「はやくどっか行け....殺すぞ」

なんだ、それ。
期待とはまったく別の言葉に唖然とする。

「殺さないのかよ」
「テメエを殺してやるほど暇じゃねえんだよ」
「嘘だろ」
「あー、ったく...めんどくせえなお前」
「は?意味わかんない」
「逃がしてやる」
「だからなんで」
「これが誕生日プレゼントだっつの!はやくどっか行け!」

逃がしてやる?それが誕生日プレゼント?

「いらない」
「は?」
「中途半端な優しさ...そんなのいらないって言ってんだよ」

ナイフを取り出し美咲の肌にあてる。

「なにすっ...!?」
「俺が欲しいのは美咲」
「っ!?」
「それ以外いらない」

顔が赤くなったり青くなったり...忙しいやつ。
でも可愛い。


「...でもまだ受け取れない」


──お前はまだあの人のモノだから


「どうしたらいい?美咲...」
「んなこと言われても....困るだろ、俺が」
「だよなぁ...じゃあ俺も今日は殺さない」
「は?」

好きな子を苛めるなんて小学生みたいだから。

「ほら、もう行け」
「意味わかんねぇし」
「...また此処で待ってるから」
「はあ?」
「その時までプレゼント待ってやるよ」
「会うわけねえだろ!くそっ」

ズンズン路地裏から出ていく美咲。
やっぱなんもないよなあ...
わかってたけど、さ。


落胆していたら急に振り向いて此方に歩いてくる美咲。

「へ...なに?」
「.....少し屈め」
「なんで」
「いいからはやくしろ!」

言われた通りに屈むと美咲が近寄ってくる。

なんだ....?

そう思った瞬間に頬に柔らかい感触。
それは美咲の唇で。


「は、...なんで?」
「......猿にはバナナで充分だと思ったんだけどよ」
「なに?」
「テメエに金使うのは勿体ねぇから、な!」

なにしてくれんの。
また、そんなこと言っちゃって。

すぐにでも帰ろうとする美咲の手を掴んで抱き寄せる。

「は!?ちょ、離せよ」
「嫌だ」
「帰らなきゃやべえって」

顔なんか林檎みたいに真っ赤で舐めたくなる。

「あんなことされて帰らせるわけないだろ」
「やめろってば!」

柔らかい耳を舐めながら喋り掛ける。






「....日付が変わるまで、傍に居ろよ美咲...?」






そう言うと腕の中に居る小さな生き物が大人しくなった。







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初猿美が誕生日とは....


駄文本当にごめんなさい!

意味もわからない!



美咲ちゃんは腰砕けたみたいですね!え



伏見Happy Birthday !!




20121107

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