まぐまぐ

□アカシ
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中学生から大人になるまでのなんか、悲恋くさい













友達の友達だった。

友達に呼ばれて紹介された。


「こいつ、伏見。あんま喋らないけどいいやつだよ」

顔を見るとつまらなそうな顔の"伏見"


「....ん」
「お、う。よろしく」


これが二人の出会いで、

このときの俺達はまだ子供で
未来なんか見えてなくて。

いつからか毎日のように
伏見に会いにいっていた。

「伏見!」
「...猿比古」
「へ?」
「猿比古って呼べよ」
「...さる、ひこ」
「美咲?」
「ちょ、なんで名前!やめろよ恥ずかしいだろうが!」
「ふっ...」
「あ!てめえ笑ったな!」
「笑ってねえよ、ばーか」
「猿比古!」



ある日突然、猿比古から呼び出されて
嬉しくて、走っていったっけ?


息を切らして指定された場所に向かうと
あいつが嬉しそうに微笑んで

「はやいな」

って汗でおでこについた前髪をはらってくれた。

「用ってなんだ?」
「ああ」
「わ、あっ」


不意に抱き締められてびっくりしたけど
大好きな猿比古の匂いでいっぱいになって
胸がきゅんとした。


「美咲」
「な、に?」
「好き、好きだよ美咲」
「...!?」


猿比古が俺を、好きって。


「...まじで?」
「あたりまえだろ」
「そう、か」
「...やっぱ気持ち悪いよな、ごめん」
「い、いや!違う!あの、その...俺もだから!」
「え...?」
「俺でよければだけど...付き合ってくれ...なんて...な」
「美咲...!」


さっきよりも俺を抱く力が強くて
猿比古の愛をたくさん感じた。




それから端末を見張るように
猿比古からの返事を待つ俺。


いつの間にか俺の全てで
俺の一番になっていた。


毎日が楽しすぎて
くだらない語りばっかして
たまに恋人みたいに"愛してる"も囁いてみた。


「卒業したら一緒に住む?」
『それって...同棲?』
「うん」
『嬉しい!一緒に住みてえ!!』
「美咲が喜んでくれるなら俺も嬉しいよ」


とか


『愛してる』
「俺も、あい...して...恥ずかしいなおい!」
『くっ...相変わらず可愛いな、美咲』
「は!?お前まじ」
『美咲』
「...なに」
『結婚しような』
「へ?」
『誰にも知られないで、小さなチャペルで結婚式をするんだよ』
「....」
『美咲?結婚はさすがに無理か』
「っ...猿の馬鹿...嬉しいに決まってんだろ...!」


とか


『ずっと一緒にいような』
「おう、あたりまえだ」
『じゃあ、旅行行くか』
「旅行?いいけど...なんで?」
『指輪』
「はい?」
『旅行先で指輪買ってやるよ』


とか、約束もたくさんした。

こいつがいたから笑えたんだ。



しばらくして俺達は
吠舞羅に出逢った。


十束さん、アンナ、坂東、千歳、出羽、藤島、草薙さん、みんないいやつで。

幼なじみの鎌本もいて。

特に王である尊さんは
俺の一番の憧れになった。

「やっぱ尊さんかっけえな!」
「...ん」
「なんだよー?俺が好きなのは猿比古だけだぞ」
「...あたりまえだ」
「ん、ふっ...ぁ...猿...?」
「美咲、大好き」



それから中学を卒業し、同棲生活が始まった。


猿比古は家賃、光熱費を稼ぐためにほぼ一日中バイトだった。



逢えないのは切なすぎて
寂しくて悲しくて

「さるひこ...!」

猿比古に抱き締めてほしくて
苦しくて涙が止まらなくなった。


お前から愛されているアカシが欲しくて



『馬鹿猿、帰ってくんな』


不機嫌なふりして心配させたりもしてみた。



それでも



言葉にならないくらいに



猿比古を愛してる俺がいた。



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