まぐまぐ

□そう、まるで幻みたいな
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秋→八→←猿












驚いた。



セプター4に入社してから
初めて吠舞羅の連中と対面したとき、



嫌でも目に入った。



小さな体に、少し大きめの服、

ニット帽から見えるオレンジ色の髪。



固まってしまった。



なんだあの身のこなしは。



スケートボードを巧みに操り、宙を舞う。


その姿はまさにヤタガラス。





しばらくして吠舞羅の伏見猿比古と言う男が
セプター4に入社して来た。



凄く出来るらしい...


あっという間に自分の上司になった。



なんだこのやる気のない男は、
喧嘩売ってるのか?



と言うくらい全身からやる気がない。



そう言えばこの男...
吠舞羅で見たことあったかな...?



だいたいいつも八田美咲を見つめてしまうので
赤の王、周防尊とNo.2の、草薙出雲くらいしか
はっきり覚えていない。




次の日は休日だった。


葦中町を歩いてると物凄い勢いで
背中に激痛が走った。


「...っ...八田...美咲...?」

背中に体当たりしてきたのは
片想いの小さな鴉。


「うわ、お前青服の...っちょっと匿え!」
「は?なんで...」
「てめえん所のくそ猿が追っかけてくるんだよ!」
「伏見さんが...?」
「そうだよ、チッ...あの店入るぞ!」


腕を引っ張られて路地裏に。


そのまま近くの店に押し込まれる。



「貴方は...こんな店来るんですか」
「は?....なに、えっ」
「ここ、ホテルですよ」
「......えっ」


お約束、な訳のない展開に
八田は固まってしまう。


まあ、言うまでもなく
ここはラブホテル。


「あっわり、そんなつもりじゃ」
「わかってますよ、...落ち着いてください」
「...おう」


慌てる姿があまりにも可愛らしくて
不意に頬が緩みそうになる。


「とりあえず適当な部屋で休憩しましょうか?」
「俺金ねえよ」
「公務員なめないでください....此方が負担します」
「それはさすがに悪いだろ」
「いいんです、そうさせてください」



部屋を選んでから足早に部屋を目指す。


その時は無言だった。




「ここ...か」
「なに緊張してるんですか」
「してねえよ!」


そう言えば、まだ19歳なんだっけ。


いやでも、もう19なら経験くらいあるよな....



そう思いつつドアを開けると
それなりに小綺麗な部屋が目に映る。


「おお....なんか、すげえ」
「今度は感動してるんですか?」
「ラブホって綺麗なんだな!」


そう言ってベッドに寝転ぶ八田。




.....なんだか急に悪いことをしてる気がしてきた。



「八田美咲...でしたっけ」
「おー。なんだ、名前知ってんのか」
「仕事上やむを得ず」
「可愛くねえな、お前は確か...秋山ばっとう?」
「阿呆ですか、秋山氷杜です」


少しでも名前を覚えてくれていて
嬉しかった。


「ひもり、な」
「名前はやめてくださいよ」
「ひもりーへへっ」
「まったく...」


一気に押し倒して八田の瞳を見つめる。



「ひ...もり....?」
「キス...してもいいですか?」
「は!?ダメに決まって...んんっ...!」


無理矢理唇を重ねて
強制的に舌を絡める。


「ん...かわい...」
「ふっ....ん、んっ...ひも、うあっ.....!」
「一応年上なんですけど...」
「えっ...はあっ...ちょっまて、って....!」


肩をぐっと押されて唇を離す。


顔を見れば両目から涙が溢れていた。


「あ......」
「うわ、なんで涙...情けねえな、俺」
「いや、すいません...」

「あ、でもなんでお前...」
「....知りませんよ、体が勝手に」
「そう、か」



嘘、本当はわかっている。

気付いてしまったみたいだ。



「美咲、さん」
「......名前で呼ぶな」



何故息が苦しいのか


身体が熱くなっているのか、全て。



「.......もう、帰りましょうか」
「....そだな」



あの人とは違う態度が胸に刺さる。





ホテルを出るとあの人に見つかった。


一番会いたくないあの人と。


「美咲...と...秋山...?」
「あ、伏見さ....」
「お...おい、美咲?なんで秋山とこんなとこ来てんだよふざけんなよ美咲は...美咲は...!」
「....うるせえな、男同士でなんかあってたまるかよ」
「.........そっか、だよな」


なんでこの人達は



悲しそうな顔をするんだ。




「俺もう帰るわ...着いてくんなよ」



小さな背中が遠ざかって行く。



「....秋山」
「はい、なんですか?」
「美咲になんかしたろ」
「何故そう思ったんですか?」
「見りゃわかんだよ、何した」
「.....キスだけ、しました」
「チッ....」



近くに置いてあるゴミ箱を
思いっきり蹴りあげる。



「秋山ぁ...」
「なんですか」
「.....もう美咲に会うんじゃねえ」
「それは此方の勝手だと思いますが」
「あんまり調子乗るなよ...」


目の前には伏見のナイフ。


「美咲は.....俺しか必要じゃねえんだよ」


伏見の瞳には八田しか映っていない。


八田の瞳にも伏見しか映っていないのと同様に。



「......考えときますね、じゃあ失礼します」




入り込めない空間があるのを
なんなく察してしまった。



「っ.......くそ.....」





久しぶりに泣いた。



何ヵ月ぶりだろうか、本当に。






「みさき...さん....」





自分には届かない人を







愛してしまったらしい。







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秋八?猿美?

わっかんねえwww



秋山氷杜(25)大好きです///




20130206

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