まぐまぐ

□幸福
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尊美、悲恋















「尊さん」




わかっていたけど覚悟はなかった。




あなたが死ぬなんて覚悟は。





最初こそ怖かったけどそれは次第に憧れに変わった。

かっこいい。


「み、尊さん!」
「あ?」
「う...今日もっか、かっこいいっすね!」
「.......」
「えっあ、すいませ....えっ?」


撫でられてる。頭。


「お前は...犬みてえだな」
「は、えっえっ?」
「....犬は嫌いじゃねえ」
「あ、ありがとうございます!」
「尊、新人口説くなや」


カウンターから顔を出したのはマスターの草薙さん。


「ちげえよ」
「あっ草薙さんども!」
「八田ちゃん今日も元気やなあ」
「そすか?」
「ええな、可愛子ちゃんがおるんわ」
「か、可愛くねえよ!やめてください草薙さん!」


俺、ここの匂い好きです。

尊さんと草薙さんの大人の香り。


十束さんの歌声も


連中の馬鹿騒ぎも


全部大好きだ。




なのに、






猿比古が裏切った。



十束さんが殺された。



尊さんが死んだ。





学園島に着く前にそばにいるって約束したのに。


抱き締めてくれたのに。


「尊さん...俺、あんたが」
「八田、お前が好きだ」
「尊さ」


尊さんの広い胸に抱き締められた。


暖かくて涙がでた。



それなのに。





「尊さん....尊さんが......!」



爆発音。



消える誇り。




赤が、




俺たちの赤が、





天に昇っていく。




尊さん。


本当に死ぬなら


俺達の前から消えるなら


何一つ残さないでください。





じゃないと俺、あんたを想っちまう。 


何度でもすがり付いて離せなくなる。





好きなんだよ、尊さん。





強いところも


優しいところも


格好いいところも


なんにも囚われないあんたが。





『No blood!No bone!No ash!』





聴こえますか?尊さん。


この声、あんたが守ったんだぜ?




身よりの無いふざけた連中を拾ってくれたんだ。



俺はきっとあんたみたいになれない。



あんたみたいに王の器も力も心の強さもないから。



愛しています。



尊さん。



「っ...みこ、とさ...!尊さん....!尊さん...尊さん...尊さんっ...!」



涙が止まらない。




あんたの綺麗な赤は一生忘れません。












───血も骨も灰も、何一つ...遺しゃしねえよ。







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尊さん...!



わかってたけどやっぱあかんわ(';ω;`)




20130107

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