緋色長編

□第1話:2人の少年少女
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季封村。
そこには鬼斬丸を封印し平和な日常を取り戻した珠紀とその守護者達がいた。
彼らは紅陵学院高校に通い毎日を楽しんでいた。
紅陵学院には高校だけでなく隣に中学もあった。
これはその紅陵学院中学に通う二人の女の子と男の子の物語…。



―朝―


「龍牙殿、おはようございます!」

紅陵学院中学三年生、猫瀬志乃。
彼女は紅陵学院中学への通学路で偶然見つけた同じく三年生、龍牙疾風に挨拶をする。
が、疾風は完全に無視。

「ちょ、龍牙殿〜!!」
「あー、うるせぇ!」
「なぜ無視をするのですか〜。」
「はぁ。」

疾風はため息を一つはく。
そしてようやく疾風は志乃に向き合う。
表情から呆れは消えないが…。

「お前なぁ…。立場ってのをわかってんのか?」
「立場、ですか…?」

志乃はよくわからず首を傾げる。
疾風はまたため息をつく。

「はぁ…。お前はなんだ?」
「猫瀬志乃です。」
「違う!…お前は玉依姫の守護者だろ?」
「はい。」
「じゃあ俺は?」
「えっと、典薬寮の役人、ですか?」
「その通り。」

そう言うと疾風は再び一人で歩き出した。
志乃は慌てて疾風を追いかける。

「それだけですか!?全然わかりません!」
「あーもう、わかれよ!俺達はいつ敵対してもおかしくないんだぞ!」
「今は敵対してないじゃないですか。」
「………。」

疾風はより一層呆れた表情をする。
彼女はいつもこうだった。
それほど長い付き合いでもないが性格は十分に把握した。
これ以上に単純な奴はいないんじゃないかと思えるぐらいに志乃はお人好しでバカ正直でわかりやすい。

そして、強い。

守護者と陰陽師の血を引いているだけある。
志乃は疾風が考え事をして歩いている間に勝手に隣で一緒に歩いていた。
疾風は今日三度目になるため息をつく。

まぁ、こんな事は言っていても本当は疾風は当然、志乃もちゃんとわかっている。

いつか、典薬寮と玉依が敵対した時…。
いつか、神、妖と人間が敵対した時…。

その時は自分達も本気で戦わなければいけないという事を…。
 

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