捧げ物
□些細なこと
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澄んだ蒼穹を見上げて、家康は溜め息を吐いた。
「どうするか…」
家光が悩んでいる理由は、簡単なものである人物を不注意から怒らせてしまったことから始まった。
銀の隙を縫って眇められた、あの美しいカナリヤ色が家康の心を掴んで離さない。
異国ではあの色は死を表わすらしいと聞いたことがあったが、あの目に殺されるならばよいと、そう思ってしまった。
「骨抜きだな…。」
自嘲するような言葉でこそあったが、後悔する気はなかった。
それよりも彼の人に許しを請うためにどうすればよいかと思案を巡らせた。
「三成君、家康君は…」
「知りません!あんなやつのことなんて!!」
「…何かあったのかい?」
回廊で呼び止められた三成は普段ならしないような失態を思わずしてしまった。
うっと詰まった三成だったが、敬愛する上司の一人半兵衛に問われたことに答えないという選択肢は持っていなかった。
元々家康への用事も急ぎのものではなく、秀吉と共に可愛がっている弟分の相談に乗ってあげようと半兵衛は、「あ゛〜、う〜」と言いよどむ三成を自室へと誘った。
「ありがとうございました。」
「いいんだよ、三成君。また何かあったら僕でも秀吉でもいいから相談するようにね。」
「そ、そんな恐れ多い。私などのためにお二方の貴重な時間を…」
「僕らが心配なんだ。君が元気なかったりするとね。だから遠慮しないように。」
そういわれてしまえば三成には反論することは出来なかった。
もう一度深く頭を下げ、半兵衛の部屋から退出した。