長編

□楔−4−
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ボロボロで意識を失った状態の一輝、瞬、紫龍、氷河。そして瀕死の星矢を連れ、地上に帰還した女神アテナこと沙織は、すぐさま彼らを病院へ搬送するために辰巳に連絡を入れようとしていた。

その時、ぽうっと大地が光を放った。

「…な、なに!?」

傷つき倒れた聖闘士達を守らねばと、沙織は星矢を抱く腕に力を入れた。


光はますます大きくなり、見渡す限りの大地が眩い光を纏い、辺りは黄金に包まれた。

明らかな異常状態にも関わらず、沙織はその光の温かさに思わず警戒を解いた。

(命の光…。まるで優しく抱かれているよう…)

沙織の脳裏によぎったのは、日本で聖戦に関わることなく過ごしているはずの大好きな、人として自身を愛してくれた紗月の抱擁。

あのとき感じた温もりと同じものが、この光にはあった。


大地に留まっていた光はやがて宙に浮きあがり、無数の蛍のように飛び交った。

その光の一つが星矢の胸の傷に触れた瞬間、溶けるように光と、…傷が消えた。

「なっ!?」

目を疑う沙織の前で、次々と同じことが起こっていき、まずは一輝たち四人が無傷の状態で体を起こした。

「これは…?」

「いったい何が起こっているんだ!?」

その問いに答えることはできなかった。

更に信じられないことに、疲弊し荒廃した大地も、瞬く間に緑豊かな土地へと変貌した。

そうしていっても大地から次々に光が溢れ、ついに大きくパリンッと言うガラスが割れるような音を響かせ、目を開けていられない程の閃光を放った。

「クッ!!」
「うわっ!」
「うっ」
「くそっ!」
「きゃぁ!!」


一瞬の静寂が訪れ、恐る恐る目を開けようとした沙織の耳に届いたのは、驚愕したような喜色が隠せない氷河の声。

「っ我が師カミュ!!」

まさかと思い振り返った先には、聖戦で死したはずの聖闘士等の姿。

よくよく周りを見てみると、氷河たちの傷も癒えていた。

ハッとして沙織は自身が抱きかかえていた星矢に目を向けた。思った通り、星矢も胸に穿たれていた傷が癒え、先ほどまでは痛々しかった呼吸が穏やかなものに変わっていた。
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