長編

□儚−6−
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「すみません、これからお願いします」

戻った冥界で見たのは複雑そうな彼の人の顔。
その中から読み取れたのは憤り。私の存在に、私の想いに私自身嫌気がさした。






天界であれからデメテルはゼウスに抗議に行った。

騙し討ちのように食べさせられたと訴えるデメテルに、ゼウスは掟は覆せないと告げた。

だが、それで諦められるデメテルではなく、地上を人質にとりゼウスを脅した。



結局紗月が食べたのはザクロの三分の一とあって、一年の三分の一を冥界で、残りの三分の二をデメテルと共に過ごせるようになった。

そっと安堵した自分に紗月は覚悟のなさを思い知った。

ぬくもりを居場所をくれたデメテル、初めて愛したハーデス。どちらも失いたくないと思ってしまう強欲な自分…。

神の身体に人の魂を持つ私…、今でも幸せな暮らしをしているのに、さらに幸せになりたいと思ってしまった。


自己嫌悪に陥る紗月。果たしてそれはいけないことなのだろうか?幸せを求め続けることは罪なのか?

紗月を縛る罪の意識の鎖。自分が許さねば解けぬ鎖。解放されるのはいつ?誰にも鎖の存在を気づかせぬままに運命の歯車は回り続ける。

廻る廻る、深淵の闇の中、囚われし光の子に手を差し伸べるのは誰?
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