長編
□儚−2−
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色とりどりの花畑のなかで優しいニンフ達に花冠を作って貰いつつ、紗月はコレーと呼ばれそこにいた。
紗月が目を再び開けた時には既に紗月はいなかった。
優しい瞳をした新しい母に抱かれ、コレーという新たな名を持ち神として存在していた。
(違う、違う!私はコレーじゃない、紗月というただの愚かな人の子!私の母は貴女ではない!)
生そのものを拒絶するように言葉を紡ぐことすらできない小さな身体で、ただ泣き続けた。
全身で全てから目を背けていた。
そう、新たな母たる大地の女神、豊饒の女神デメテルの愛を知るまでは
「コレー、コレー。私の愛しい娘。貴女の憂いは何?私?それとも父?それとも…その混ざり合っている魂の輝きのせい?」
(えっ!?わかるの?私が、純粋な貴女の娘ではないことが…なのにどうして……)
「いいえ、それは違うわ。貴女は間違いなく私の娘、例えその魂に誰の記憶が刻まれていようと。このデメテルの娘よ。」
優しく慈しむように撫でられた手に紗月の母を思い出した。
(ごめんなさい、私は貴女にもう一人の母を重ねてしまう。もう会えない母を恋しく思ってしまう)
嘆きの声に少し目を見開いたデメテルは慈愛の眼差しで我が子を見つめた。
「優しい子ね、いいのよ寂しいなら、悲しいなら、恋しいならお泣きなさい。忘れなくていいの、貴女の大切な人を。だけど生きて、そうでないと貴女の記憶に生きる人も飛沫となってしまうでしょ?」
ぽろり、ぽろり
小さな雫が紗月の瞳から溢れた。