長編

□儚−1−
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「ねぇ、紗月。明日の休み暇?」

大学のキャンパス内で友人の真理に誘いを受けた。…やけに明るく

「なあに?真理」

暇だったけれど、迂闊に返事はできない。真理はいい友人だけど、同時にトラブルメーカーでもあるから。

少し、紗月の真理を見つめる瞳に不信感が宿っているのに気がついたのか、上機嫌だった真理が、頬を膨らませた。

「むぅ、何よ、その目。」
真理の膨らんだ頬に指を差し、ぷしゅぅという音と共に空気を抜きつつ、紗月は笑った。

「ふふ、ごめんね。でも真理が言い出したことで、トラブルにならないことのほうが少ないでしょ?」

因みに最近では冬なのに花火をしようと何故か爆竹を真夜中の住宅街で鳴らした。

幾つも心当たりのある真理は勢いをなくすも、気を取り戻し、紗月に迫った。

「もー、でも今日は違うよぉ、ねぇ、紗月。合コン行かない?あと一人女の子足りなくて、紗月彼氏いないっていってたし、いいでしょ?しかも飲み代とかはあっち持ち!」
合コンに少し眉を潜めたものの、飲み代ただは嬉しいし、この真理の様子からしてもOK以外受け付けないと思った、紗月は苦笑して了承した。

「よーし、じゃあ明日13時に駅前集合ね。遅れたら、紗月の携帯にメールしまくるからね!」

元気に言って別れた真理を見送りつつ、絶対遅れまいと心に決めた。

そう、ここが“私”の分かれ道。そうして運命の扉は開かれた。
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