短編
□甘いのは?
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2月14日
気になる異性にチョコレートを渡し、気持ちを伝えるも良し。
友達同士で交換するのも良し。
感謝の気持ちを込めて皆に配るのも良し。
そう、この日は俗に言うバレンタインデーだ。
女子も男子にも一大イベントである。
それは学校でも例外ではない訳で・・・
「キャアァァァーーーー///シュウ君よー!!」
「私のチョコ受け取って下さい///」
「シュウ君、私のチョコ受け取って!」
「あ!ズルい!!私のもっ」
気になる異性に、自分のチョコを受け取って貰おうと必死になっている少女達。
黄色い歓声が飛び交う中、苦笑いでその声に応えるシュウと呼ばれた少年。
「ありがとう、でも気持ちだけ受け取っておくよ」
そう言ってその場を素早く去る。
長年の経験から、これ以上関わったらヤバイと認識していた。
「「待って、シュウ君/様/先輩!!」」
後ろから、女子の悲鳴とも取れる声が聞こえてきたが、振り向かずに進んで行く。
ようやく女子の群れから逃れる事の出来たシュウは、溜息をついた。
彼にとっては、バレンタインなんて憂鬱な日にしか過ぎない。
毎年この時期になると、手渡しから始まり・・・机の中、ロッカーの中、下駄箱の中などなど。
兎に角、チョコレートの量が半端ないのだ。
更に言うと、彼は甘いものを進んで口にするタイプではない。
どちらかというと苦手な方に属するものだった。
なので毎年、貰った時にはいつも・・・
「あら?シュウじゃない。また追われたの?」
「あぁ、ハルカか。その通りだよ」
ハルカと呼ばれた少女は、シュウを見つけると声をかけた。
「そうだ。はい、ハルカ」
思い出したかのように、カバンの中を探るシュウ。
そして、可愛らしいラッピングをされた数箱取り出す。
それをハルカに渡した。
「ありがとう」
それを嬉しそうに、顔を綻ばせながら受け取るハルカ。
早速、受け取った箱のラッピングを丁寧に破っていく。
そして、出てきたチョコを、嬉しそうに自分の口の中へ放り込んだ。
そんな様子を、シュウは誰も見た事もないような優しい笑顔で見る。
ちょっと変わった2人のバレンタインデー・・・
(美味しかったかも〜)
(じゃぁ僕も)
ちゅっ
(////!!?)
(御馳走様でした)