短編

□一緒に帰りましょっ
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学パロ


下校時間を告げるチャイムが校内に響き渡った。

冬真っ只中のこの時期、下校最中の生徒達は皆、何かしらの防寒対策をしっかりとしている。
勿論俺もその内の一人だ。

ピューッと冷たい風が頬を掠める。

その冷たさにブルッと体が震え、ぶえっくしょんっと盛大なクシャミをかます。

周りに白い目で見られちまったが、そんな事はよくあるこった気にすんなッつー事で。


兎に角こんな寒い中外に居たくねぇし、サッサと家に帰っちまおーっと。

鼻歌交じりに歩いてると、少し前を何の防寒対策もしていない奴が歩いている事に気が付く。

全く知らねぇ奴だったら放って置くんだが、生憎そいつはよく見知った後姿だった。


「おい、クリス」


声を掛けるとクリスは直ぐに振り返った。

よく見ると鼻や耳、それに手の先も真っ赤になっている。
そんなクリスの姿を見ていると、こっちまで寒くなっちまった。

「あら、ゴールドどうかしたの?」

俺を見てきょとんとしているクリスに質問する。

「どうしたの、じゃねぇよ。お前、手袋とかはどうした」

「今日に限って忘れちゃったの」

なんて照れ臭そうにそう告げるクリスに俺は心底呆れた。

「珍しいこともあるんだな、クソ真面目なお前が忘れるなんて」

「今日はボーっとしてたのよ。それに朝は暖かかったし、後・・・」

段々と言葉が尻窄みになっていくクリスに、俺はワザとらしく溜息を吐く。

そして俺は右手にはめていた手袋とマフラーを取り、無言でクリスに差し出す。

クリスは不思議そうに俺と手袋やマフラーを交互に見ていた。

痺れを切らした俺はクリスの首にマフラーを巻いてやり、空いている俺の右手でクリスの左手を握る。

「さーてと、ほら行くぞ」

「ゴールド、あのっこれって」

頬を染め戸惑いながら俺の横で歩くクリスの手を少し強く握る。

「・・・嫌かよ」

子供っぽいと思いながらも、ついつい不貞腐れてしまう。

情けねぇな俺って・・・何て自己嫌悪に陥っていると、クリスが俺の手を握り返してきた。

「ううん、ありがとう。凄く温かいわ」

ふわりとクリスが嬉しそうに笑う。

そんなクリスを見て、俺は何だか照れくさい気持ちで一杯になった。


こんな日がずっと続けば良いな。なんてガラにでもない事を思いながら、俺はさり気無くクリスの歩幅に合わせて、いつもよりゆっくり歩いて帰る。

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