短編

□貴方と居るだけで幸せなの
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「・・・バカみたい」

私は誰にも聞こえないような、小さな声で呟く。


今日は久しぶりに彼とのデートの日。


昨日の夜は一生懸命服を選んだり、髪型を変えてみようかと悩んだり・・・

楽しみでなかなか寝付けなかったのも事実。



今日の格好は、昨日悩みに悩んで選んだ服。

それにお気に入りのイヤリング、靴だって最近買ったばかりの物。


全部彼の事を想いながら選んだ物ばかり・・・。


時計をチラッと見る。
待ち合わせ時間は、当の昔に過ぎてしまっていた。

それでも待つのは、やっぱり彼に会いたいからで。


気が付けば、周りはカップルばかりで、一人でポツンと居る私が酷く惨めに思えてきた。

あぁ、本当に・・・


「バカみたいだわ」


周りからの視線に耐え切れなくなって来て、私は顔を俯かせる。

こんな自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて、視界がぼやけてきた。


下唇をギュッと噛んで、こんな所で泣いてはいけないと必死で我慢する。





「クリスッ!!」



聞きたかった声が漸く聞こえ、私はすぐさま顔を上げる。

そこにはずっと待ち焦がれていた私の想い人が、荒い息を繰り返しながら立っていた。


「ッゴールド・・・!」

「わりぃ、待ったか?って、おいっ」

私はゴールドに思い切り抱き付いた。

普段は人前でこんな事は絶対にしないけれど、今日だけは恥ずかしさも忘れていた。

「ずっと待ってたわよっバカ!!」

ゴールドの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。


最初は戸惑っていたゴールドも、私をゆっくりと抱きしめ返してくれた。

少ししてから抱き締めるのを止めて、彼は遅刻した訳をボソボソ話し出す。


「えーっと、だからよぉ・・・あのっあれだよ・・・」

「・・・アレって何よ」


珍しく歯切れの悪い彼に私は疑問を抱く。


普段の遅刻の場合は、大抵「ま、よくあるこった。気にすんな」で通そうとする。

まぁ、大体の理由が寝坊だけど。


でも今回は少しいつもと違う感じがする・・・。


「ねぇ、どうしたの?」

「だぁーーー!!!これ選んでたら遅くなったんだよ。以上っ!」


半ば強引に押し付けられたのは、綺麗にラッピングされた手のひらサイズの小さな箱。


「開けていい?」

「・・・おぅ」


リボンをスルリと解き、箱を開けてみると、中に入っていたのは・・・

「ブレスレット・・・?」

中に入っていたのは、シンプルで星をモチーフとした可愛らしいブレスレットだった。


「くれるの?」

「おぅ・・・迷惑だったか?」

不安そうに聞くゴールドに対し、私は心からの笑顔で答える。

「ううん。凄く嬉しいわ、ありがとうゴールド」

「なら、良かったぜ」

少々彼の顔が赤かったのは気のせいではないだろう。
きっと私も赤いんだろうけど・・・。


ほら。と差し出された手に、自分の手を重ね握り締める。


「さぁ、デートを始めましょうか?お姫さん」

「えぇ、王子様」


ほら。貴方と居るだけで、こんなにも幸せになれる。

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