短編
□素直になれなくて
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無我夢中に、あたしは走った。
目から大粒の涙が頬を伝う。そのおかげで、視界がぼやける。
しかも、森の中を走っているから所々にかすり傷が出来ていた。
でも、そんな些細なことを気にするより、心の方がよっぽど痛い。
つい考えごとに気をとられてしまっていたサファイアは、目の前にある崖に気がつかなかった。
案の定、サファイアは足を滑らせ崖から真っ逆さまに落ちて行った。
「っ!!」
幸い、下に木々がありそれがクッションとなって大した怪我はなかった。
が、変な体制で着地をしてしまったので、足を捻ってしまい身動きが取れない。
しかも、今日に限って手持ちのポケモンは全て家に置いてきた。
「・・・どぎゃんしようっ!!」
もう、空は黄金色に成りつつあった。
「え?帰って来ていないんですか!?」
ルビーは、サファイアの家を訪ねていた。
しかし、彼女はまだ帰っていないというのだ。
そんなはずはない。彼女はあの時、家に帰ると言ったんだ。
まさか、彼女の身に何かあったのか!?
そんな不安を心の中に募らせていると、さらなる衝撃の言葉がオダマキ博士から告げられた。
「そう言えば、サファイアの奴手持ちポケモンをすべて家に置いていたな・・・」
この言葉を聞いたとたん、まちがいなく、何かあったと確信した。
僕は、博士にお礼の言葉を伝えると、森に向かって一直線に走った。
どうか、サファイアっ無事でいてくれ!!
空には、星が一つ輝いていた。
「サファイア・・・無事でいてくれ!!」
もしも君に何かあったら、僕は・・・