短編
□素直になれなくて
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最後の見たのは君の泣き顔だった。
彼女が出て行った後の秘密基地は、酷く静かで、僕は後悔の波にのまれた。
しばらくの間、思考が停止してしまっていたがなんとか意識が戻った。
あの時の・・・
マボロシ島での出来事は、きちんと覚えていた。
しかし、この関係が・・・友達として今まで接してきたこの関係が・・・
崩れてしまうようで、僕は怖かったんだ。
彼女が傷つくのは、分かっていたはずなのに・・・
結局僕は、ただの臆病者だ。
「サファイア・・・」
誰よりも、大切な女の子。
僕は、彼女を守りたかったのに、結局彼女を傷つけているのは僕じゃないか。
守っていたのは、彼女じゃなくて臆病な僕自身だ。
「・・・友達なわけないだろっ」
最初こそは、勢いで80日の冒険競争を受けてしまったけど、僕はだんだんと君と競争するのが楽しくなった。
そして、思い出の女の子と同じくらい、君に惹かれていった。
その思い出の女の子が、君だったと知った時は、すごくビックリしたんだ。
「・・・ごめん。サファイアっ」
本当は、こうなることが最初から分かってたはずなのに
もしかしたら、サファイアも無かったことにしてくれるんじゃないかって考えが、いつの間にか僕の中に出来てしまった。
そんなはずなんて、あるわけ無いのに。
その結果がこのザマだ。
僕は彼女を傷つけてばかりだ・・・。
「・・・ごめんっ」
秘密基地を出て行くときのサファイアの顔が、頭の中にチラつく。
酷く絶望に満ちた目で大きな瞳から、大粒の涙を流しながら・・・
「『同情なんかせんでっ!!』・・・か」